研究課題
日本では、高齢者ケアの長期化・重度化・複合化が一層見込まれている。一方、アジアの国々においても急速に高齢化が進行している。東アジアの隣国においても介護の延長線上の終末期ケアへの対応が、何れ迫られる。高齢化がかなり進行してから手を打つのでは、手遅れになる危険性があり、後期高齢者の重度化する介護とその延長線上の終末期ケアにどのように対応するのか、隣国としても関心があり、共通問題として捉えていく必要がある。本研究では、東アジア(韓国、中国、台湾)の高齢者施設の看取りの実態調査と関係職種の死生観と看取り観に対する意識調査を行ってきた。日本では、医学・医療の発達の陰に隠れて忘れられてきている文化が多く、個別的で多様化する高齢者の看取りケアの概念や考え方も未だ流動的であり、宗教的な背景が急速に失われ、介護職の教育体制も十分とは言えない状況の中で、看取りケアが行われてきている。また、韓国、台湾とも制度は異なるが、日本と同様に「看取りケア」を病院へと移しており、老、病、死苦に対する理解と変化をもたらしていた。中国では、病院で最後まで最善を尽くすことが良いとされていたが、農村部では、死ぬ前に家に連れて帰ることを重視し、地域格差があった。各国とも高齢者施設における看取りケアは提唱しておらず、看取りは、あくまで医療の範疇との認識をしている。そして、末期における集中治療、または経管栄養法を受理する傾向も日本と同様にみられ、老人病院や高齢者施設において行われていた。未だ、死についてはタブー視している人が多く、高齢者にどのような終末期を迎えたいか聞けないこと、また、子ども達は親に対してできる限りの救命を望む傾向があること、また、高齢者も生きるという意欲が、特に中国においては高いことが伺えた。東アジアの国々では、儒教思想による高齢者扶養の考えがあり、宗教的死生観、倫理観に基づく関係が残されていた。
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