研究課題/領域番号 |
24653151
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
山田 裕子 同志社大学, 社会学部, 教授 (80278457)
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研究分担者 |
武地 一 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10314197)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 初期認知症 / MCI / 家族との相互作用 / 友好的会話 / 感情の表出 / BPSD |
研究概要 |
本研究はMCI(軽度認知症) および初期認知症の患者の感情の、BPSD および認知機能との関係を探る。仮説を「ポジティヴな感情はBPSD と負の関係を持ち、BPSD は認知機能に影響する」とする。行動範囲の狭小化や社会生活の矮小化、さらに家族との関係悪化で、日常的に他者の「敵対的」な言動にさらされることの多いMCI 及び初期認知症の患者の社会関係を把握すると共に、友好的な会話環境では自尊感情やポジティヴな感情表出機会の増加がみられることを想定し、それらのBPSD と認知機能への影響を測り、BPSD生起のメカニズムを立証しようとする。 本年度は、この調査の準備と試行に費やされた。成果は次の2点である。 第1点は、先行文献の渉猟とその検討を行い、①MCI および初期認知症の患者が、家族と日常的に持っている相互作用を観察確認する方法を決定し、次に、②友好的な会話や相互作用によるポジティヴな感情をどのように把握するかを考慮、吟味し、その結果次のような決定を行った。①の実施場所は、2か所とし、共同研究者の主宰する外来の患者の診察前問診や相談の記録から読み取ること、また、2012年9月から、我々チームが開設したメモリーカフェ『Oカフェ』において、毎週1回、本人と家族からの聞き取りを行うことである。②の感情の把握場所も、2か所とし、1か所は自宅で家族による記録から、2か所目は『Oカフェ』で人為的に友好的会話環境を提供し、ポジティヴな感情を2人以上の観察者評価の一致と、本人からの証言をもとに得ることにした。 第2点は、メモリーカフェの発足・運営に参加し軌道に乗せることができた。この研究に必須の要素であり、かつ実現が難しい「友好的な会話や相互作用」が提供される環境がカフェであり、第2年度の研究に基盤を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに、本研究に欠かせない家族介護者からの聞き取りと介入支援を重点的に行い、認知症やMCIの本人と家族との相互作用のメカニズムとBPSDの関係の理論的構築を試みた。それを基に試論として、平成24年7月には、「家族へのケア」の項目を北徹監修 横出正之、荒井秀典編 『健康長寿学大事典 QOLからEBMまで』V-8,798-805.に上梓することができた。また、基礎的なデータ収集に必要な尺度、行動範囲の狭小化や社会生活の矮小化を探るための尺度、BPSDを測る尺度、ポジティヴな感情を測る尺度などの決定も行った。 申請時には、24年度後半から、初期認知症とMCIの人をこの研究へ正式な参加を開始する計画であったが、その参入は平成25年6月に延期して行う予定である。 延期の理由は、ポジティヴな感情を引き起こすための「友好的な会話や相互作用」が提供される環境を確保する準備が必要だったことである。そのような環境は、初期の認知症やMCIの人が感じる、もの忘れをすることに対する絶望的な感情や、日常生活で生じる家族との軋轢や葛藤による心理的なトラウマなどの心情を十分に理解した上で、友好的な会話を続けることに熟練したソーシャルワーカーやボランティアなどのスタッフを必要とする。しかし、初期の認知症やMCIの人が感じるこのような心情への理解は容易なものではないし、また理解した上で友好的な会話を続けることは、かなりの熟練を必要とし、教育と訓練、スーパービジョンを必要とする。同時に、そのような「友好的な会話や相互作用」を常に提供するために、彼らの力を継続できるコーディネートが必要であり、そのようなシステムをこの研究の中に理論的に実質的に整備することが必要だった。申請時には、システムの確立にそれほどの時間が必要とは考えることができなかったが、研究開始後に、発見した現実であった。
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今後の研究の推進方策 |
1年間を要して、ポジティヴな感情を引き起こすための「友好的な会話や相互作用」が提供される環境が確保され、基礎的なデータ収集に必要な尺度も決定した。いよいよ初期認知症およびMCIの高齢者とその家族への調査を6月から正式に始める。実践的かつ挑戦的な研究であるので、機械的、計画的な被験者の参入は見込めないと覚悟している。柔軟な方法をそのつど採るとともに、同時にそのようなad hocな実行をきちんと文章化し、その中にもルールを発見してゆくことも課題と考えている。 調査参加者をもの忘れ外来受診者からリクルートするが、若干の懸念がある。現在、認知症はありふれた病気となってきており、この研究の参加者は多く見つけられるはずだが、一方で、独居や単身で受診する患者の増加で、家族介護者を前提とする形式を持つ当研究への参加がかなわない受診者も多いことも想定できる。 平成25年9月にフィンランドのヘルシンキ大学との2国間セミナーを共催するが、家族形態が異なるフィンランドの認知症高齢者の状況と彼らへのケアについての情報を得て、独居や単身で受診する患者の増加による影響をうける当研究の調査方法に示唆を得る予定である。また、これまでの研究の準備とそれまでの進捗を発表し情報交換を行うことを期待している。
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次年度の研究費の使用計画 |
ポジティヴな感情を引き起こすための「友好的な会話や相互作用」を提供するための熟練したソーシャルワーカーと人員への謝礼、得られた言語および数値データの入力、分析に要する人員の謝礼に使用する。もの忘れ外来でのリクルートのための、診察前の相談活動のソーシャルワーカーへの謝礼に用いる。
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