研究課題/領域番号 |
24653156
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 大阪大谷大学 |
研究代表者 |
横浜 勇樹 大阪大谷大学, 教育学部, 准教授 (30369615)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 障がい児 / 東アジア / 北京市 / 親の会 / 草の根NGO / 国際研究者交流 |
研究概要 |
平成24年度の研究は、中国都市部で展開しているNGOの活動状況を把握するために、北京市内で障害児を支援しているNGOの活動について調査活動をおこなった。また、都市部の高齢者福祉施設に入居している高齢者の状況について調査活動をおこなった。同時に、中国のNGOや非営利組織、また社会福祉に関する文献や資料を収集し、調査活動と同時に現代中国のNGOなどに関する制度や政策的な補完作業もおこなった。 その結果、ある北京市内のNGOでは、障害児の支援活動を宗教的背景をもとに実施していた。この活動は10年以上にわたって継続的に中国で地道に展開されている活動で、支援している児童は、中国政府の支援がいきわたらない児童(障害児)の支援をおこなっていた。現代中国においては、児童福祉施設の制度や政策が遅れていることもあり、特に、重症心身障害児の孤児については、まったく支援が及んでいないことも明らかになった。調査した団体は、宗教を背景に広く中国全土のみならず他国からも寄付金を集め、それをもとに事業運営をおこなっていたが、寄付金の収集にも多大の労力がかかることが明らかになった。 また、高齢者入居施設の調査結果では、入居してる高齢者の多くが施設での生活を希望している割合が高いことが特徴的であった。このことは、現代中国の都市部における家族の高齢者扶養のありかたが、従来の家族内扶養から変化していることも、その要因であると考えられた。また、高齢者の施設の満足度は高いことも明らかになった。 以上の結果から、現代中国の社会福祉の状況と今後の制度、政策についての課題が明らかになり、今後の研究活動につなげていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は中国北京市の障害児施設、および高齢者施設のNGOの活動とサービス利用者の状況について聞き取り調査を中心におこなった。本調査の計画は、当初の予定通りであり、北京市内の調査からはNGOの活動が障がい孤児の支援をおこなっていると言う新たな発見があった。またその団体がおこなっている障がい児の日常生活支援について、親の会が立ち上がり、その活動を親の会が中心になっておこなっている点は、新しい発見であった。また、高齢者施設の調査では、中国老齢科学研究所のスタッフに協力を得ることができ、スムーズに研究を遂行することも出来た。さらに、入居している高齢者を対象に聞き取り調査をすることも出来、その意味で本年度の調査活動は、おおむね順調であると考える。 加えてNGOに関する資料を収集するために、清華大学や河北大学の研究者らと交流し、現地において資料を収集することができたことは、当初の計画通りであり、順調にすすんでいると考える。 一方、調査活動中の8月中旬以降、日中の社会情勢が悪化したこともあり、北京市以外の都市におけるNGOの調査活動が、残念ながら情勢の悪化にともなって難しくなった。その点、今後も状況に応じて中国の研究協力者のアドバイスをいただきながら引き続き調査活動をおこなっていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は北京市内で地域福祉活動や障害児支援活動、高齢者支援活動を展開しているNGOを中心に調査活動をおこなった。これまで順調に研究活動をおこなっているので、その成果を国際学会で発表し多方面から、研究に関する助言や示唆をいただきたいと考えている。また、北京市内だけでなく中国の他の大都市におけるNGOの活動とその展開についても、調査活動をおこなう予定である。そのために、現在、研究協力者である河北大学の呂先生や中国老齢科学研究所の陶先生らと、調査地の選定と調査内容について具体的につめているところである。 調査は、聞き取り調査およびアンケート調査などによって、必要な研究協力員を確保しておこなっていく予定である。具体的な調査地については、上海市、広州市を念頭においており、適宜、調査地の状況把握をおこなっている。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、北京市内と河北市において調査研究をおこなう予定であった。そして当該年度の研究計画においては、おおむね3週間程度の調査期間を持つ予定であったが、調査初日(8月中旬)から日中関係が非常に悪化し、調査地における調査遂行のための安全の確保がなされない状況が出現した。そのため、調査期間を15日に短縮して調査をおこなったため、本年度調査を遂行できなかったことによる未使用の研究費が発生した。 しかし、平成25年度においては、すでに河北大学の呂先生らと北京の情勢について情報を得ており、平成24年度に調査が難しかった地域において調査活動をする予定で現在準備をおこなっている。また、平成24年度に中国で開催される国際学会に参加する予定であったが、これについても、日中関係の情勢の悪化から不参加とせざるを得なかったため、平成25年度は、状況に応じて国際学会にて平成24年度の研究成果を発表する予定で準備をおこなっている。 また、平成25年度は、当初の計画通り、香港におけるNGOの活動の調査をおこなう予定であり、現在その準備にあたっている。 すなわち、平成25年度は、次年度に繰り越した研究費によって平成24年度に北京市内で調査を遂行できなかった調査をおこなものにあて、さらに平成25年度の研究費は、香港における調査活動にあて研究をおこなう予定である。
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