研究課題/領域番号 |
24653157
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 福岡医療短期大学 |
研究代表者 |
古野 みはる 福岡医療短期大学, その他部局等, 講師 (20613433)
|
研究分担者 |
今村 浩司 西南女学院大学, 保健福祉学部, 准教授 (80636382)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 市民後見人 |
研究概要 |
今年度はわが国の市民後見人育成の現状と課題を整理し、特に小規模市町村の取り組み状況についてヒアリング調査を行い、社会資源の格差等の現状と問題点を把握することとしていた。 基本文献や資料の収集、先駆的市町村の取り組み状況などを基にヒアリング項目を確定し、平成23年度から始まった国のモデル事業に取り組んでいる筑紫野市、大牟田市、水俣市、余市町にヒアリング調査を実施した。その結果、これら比較的人口規模が小さく、社会資源が豊富とはいえない市町村が市民後見人育成に取り組みを始めた経緯に共通点が見られた。以前から権利擁護に関する専門職の勉強会の開催があったり、主体的に地域福祉に関わる住民組織の存在があるなど、その活動のベースになる組織や体制があることが明らかになった。 その他平成23年度から国のモデル事業を開始している37市区町について、厚生労働省に提出された実績報告書から事業の委託先を分析してみると、社会福祉協議会に委託して研修を実施しているところが19ヶ所、NPO法人その他に委託しているところが16ヶ所、委託なしが2ヶ所であり、日常生活自立支援事業の実績から社会福祉協議会が中心となっている現状が見られた。平成23年度から事業が開始されていることもあり、後見センター等の設置が平成24年度以降というところが大半であり、市民後見人養成後の支援・監督体制についての具体的な実績を調査することが出来なかった。この点は、平成24年度からモデル事業を開始した市区町村を併せて、質問紙の郵送による調査を実施したい。 また、余市町については、近隣の小樽市を中心とした周辺市町村(1市5町)で広域的な取り組みをしており、本研究の主目的である小規模市町村間のネットワーク構築等広域的な支援体制づくりをすでに実践しており、広域的視点での研修体制、その後の支援・監督体制を提示するうえでモデルとなるものであった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、研究目的の一番目の市民後見人育成事業を実施している先駆的市町村、平成23年度から国のモデル事業を開始している37市区町の実施状況を調査し、わが国の市民後見人育成の現状と課題を抽出することであった。 先駆的市町村の実施状況については文献と資料収集を行い、37市区町のモデル事業の実施状況については厚生労働省に提出された実績報告書の分析を行い調査項目を確定し、筑紫野市、大牟田市、水俣市、余市町にヒアリング調査を行った。研究の主目的が小規模市町村におけるネットワーク構築等広域的な支援体制づくりを含めた研修体制のプログラム作成であるので、特にそれぞれの自治体の研修委託状況や委託先、研修内容、市民後見人の活動を安定的に実施するための組織体制の構築、市民後見人の適正な活動のための支援等、個々の自治体での専門職組織、住民組織、後見センター等を含めた社会資源の状況を把握した。 実績報告書、ヒアリング調査からは、モデル事業に名乗りを挙げた自治体には、従前から活動のベースとなる専門職組織や住民組織が存在することが明らかとなり、これから市民後見人育成を始める自治体においても同様の組織の構築が必要であることが示唆された。また、これらの組織を広域的視点で構築していく点については、余市町の社会福祉協議会の実績が活用できると考えている。 さらに、市民後見人育成については、単に育成するだけでなく、実際の市民後見人の活用やバックアップ体制の拡充が求められていることもヒアリング調査を通じて明らかとなった。但し、後見センター等の設立も含めたバックアップ体制の状況については、平成24年度から取り組む自治体が多いため、今後調査する必要がある。 以上のように、今年度の研究目的についてはおおむね達成していると自己評価している。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度に実施できなかった後見センター等の設立も含めたバックアップ体制の現状・課題について、モデル事業の37市区町に質問紙による調査を実施し、市民後見人育成のみならず、その活用やバックアップ体制を含めたシステム構築のための課題を抽出したい。その際、特に人口規模の少ない市町については近隣市町村を取り込んだセンター設立等が視野に入るのか否かも確認していきたい。 さらに、平成25年度はドイツ成年者世話法の現地調査を行い、現状と課題を把握することでわが国での市民後見人育成の研修体制づくりに反映させたい。現地ヒアリング調査の日程については平成25年度末を予定しているので、それまでに研究分担者・協力者と共にドイツ成年者世話法に関する関連資料の収集、ヒアリング調査項目の確定を行う。 ドイツでの訪問先はデュッセルドルフを予定しており、ドイツ世話制度を三位一体で支えている後見裁判所、世話役所、世話人協会を訪問し、それぞれの機関が担っている役割についてヒアリング調査を行う。また、世話人のなかでも市民によるボランティアとして実際に活動している名誉職世話人らへのヒアリング調査を検討している。 その後、ドイツでのヒアリング調査結果の整理・分析を行うが、後見裁判所、世話役所、世話人協会それぞれの実施体制や役割を明確化し、行政と民間支援組織との連携のあり方、名誉職世話人の活動内容、支援体制等について、わが国の市民後見人育成と活用に反映させたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に実施できなかった後見センター等の設立も含めたバックアップ体制の現状・課題について、モデル事業の37市区町に質問紙の郵送による調査を実施する予定である。また、その中から特筆すべき自治体があれば、詳細を調査するためにヒアリング調査に出向きたい。 平成25年度のドイツでの現地調査にあたり、さらに文献や資料の収集を行い、それらを整理することでヒアリング調査項目を確定したい。 平成25年度末のドイツ現地調査については、北九州市の成年後見センターの立ち上げ時から関わっている研究分担者、ドイツや北欧での福祉施策の調査実績がある研究協力者と共に現地へ行き、ドイツ世話制度を支えている機関や実際の名誉職世話人らにヒアリング調査を実施する予定である(滞在期間は移動日を含めて8日間程度)。現地でのヒアリング調査は通訳を依頼する。研究分担者、協力者と共にヒアリング調査結果の整理・分析を行う。 これらの成果を基に、学術論文にまとめる準備についても積極的に進める予定である。
|