本研究では、認知症理解のための交流プログラムを評価することを目的として、近江八幡市で実施されている認知症啓発授業を事例に検証を行った。調査対象者として近江八幡市内で平成24年度に認知症啓発授業に参加した小学校2校の5~6年生児童163人、中学校4校の3年生619人を対象に、認知症啓発授業が実施される4月~11月にかけて授業前と授業後に質問紙調査を行った。認知症高齢者啓発授業自体の目的を基準にして、2つの評価指標(①認知症に対する理解度、②認知症高齢者のイメージ)について量的分析を行った。その他に認知症啓発授業の開始前と終了後に各小中学校で実施した感想文についても回収し、エスノメソドロジーの観点から質的分析を行った。調査内容及び手続きに関しては、近江八幡市担当職員や対象学校の担当教諭らと議論を重ねたうえで作成した。質問紙調査の分析からは、小中学生の認知症への理解や認知症高齢者に対するイメージが、全体的にポジティブなものに変化するとともに、認知症に関する知識も増加したことが確認された。また、多くの小中学生が授業に積極的に取り組むとともに、認知症の理解にとても役立つ授業であったと感じていることが示された。感想文の質的分析からは、教材を通して認知症者の気持ちを理解するとともに、グループワークから認知症の知識を学習している様子が認められた。以上の結果から、認知症啓発授業を通して、小中学生は、認知症者の考え方や行動を理解するとともに、キャラバン・メイトを含めた「グループワーク」での話し合いのなかで、お互いに教え合うことで認知症について多くの知識を学んでいるのではないかと考察された。
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