研究課題/領域番号 |
24653160
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
亀田 達也 北海道大学, 文学研究科, 教授 (20214554)
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研究分担者 |
中島 晃 北海道大学, 文学研究科, 助教 (30312325)
松田 哲也 玉川大学, 付置研究所, 准教授 (30384720)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 痛み / 共感 / 社会性 / 認知神経科学 / 社会神経科学 / 実験 / 生理計測 / 視線 |
研究概要 |
本年度は、心理学、神経科学、医学、社会学、人類学を含む多領域でこれまでに蓄積されてきた「痛み経験」に関わる文献を広く収集し、「痛みの社会性」について概念分析を行った。こうした分析から、「痛みの社会性」に関する複数の鍵概念(物理的刺激-社会的刺激、急性痛-慢性痛など痛みの発生起源や種類に関わる区別、自動過程-制御過程など痛みを処理するための複数の神経経路の関与、情動的共感-認知的共感の交絡等)が析出された。こうした概念分析に基づき、複数の予備的な実験を行った。その1つは、自分とは痛み感受性の異なる他者(自分が痛みを感じない刺激に対して痛みを感じる他者)に対する共感反応が生じ得るかという問題について、「光刺激に対して熱を感じる他者」の映像をノーマルな被験者が視聴している間の生理反応を測定するという実験パラダイムを開発した。このパラダイムを用いた予備的実験の結果、上記の映像を観察中のノーマルな被験者の生理反応(指尖容積脈波: BVP)に統計的に有意な変化が認められ、自らは痛みを感じない光刺激に対する「アブノーマル」な他者反応を観察しているときにでも共感的反応が起きることが明らかになった。もう1つの予備的実験では、社会的分配場面での共感反応を、もっとも不遇な配分を受ける他者に向ける注意をアイトラッカーにより計測するという実験パラダイムにより検討した。この予備実験の結果は、被験者は不遇な他者の状態にもっとも視線を向けるというマキシミン型の注意配分を示すという事実が明らかになった。また自他認知の脳科学的基盤を明らかにするため、比較照合課題を用いてメタ認知に関連する脳部位をfMRIで確認した。自分に関する思考の時にはanterior insula, ACCの活動が高く、他人に関する思考の時にはPCCの活動が高いことが確認され、思考における自他の区別を脳活動で区別できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、関連文献に基づく概念分析に予想以上の時間がかかったため、当初の予定に比べて実験を開始する時期が遅れた。しかし、年度末に行った複数の予備的実験から有望な結果が得られており、次年度以降、所期のデータ収集を行う。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に行った概念分析と予備的実験の結果をもとに、所期のデータ収集を着実に行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度は、関連文献に基づく概念分析に予想以上の時間がかかったため、当初の予定に比べて実験を開始する時期が遅れた。昨年度に予定されていた残りの実験計画を速やかに遂行するために、当該実験を担当する実験補助者の雇用、必要機器整備、打ち合わせ旅費、実験参加者謝金に繰越金額を使用する。
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