安心感は適応を扱う心理学の広い分野において最も重要な概念の1つである。安心感を中核にしたボウルビィのアタッチメント理論に関連する研究において、Mikulincer & Shaverらは、プライミングにより安心感を喚起すると、共感性や援助行動など様々な向社会性がポジティブな変化を示すことを見いだした。本研究は、彼らの手続きを参考に安心感を喚起した際の神経・生理指標を測定するために、昨年度、実験装置の整備と予備実験を行った。本年度は、昨年度の予備実験の分析を行った後、本実験を行う予定であったが、本学建物の改修工事の影響により、当初計画されていた設備での実験の実施が困難となった。そのため、神経・生理指標測定にあたって、簡易的な装置を用いた実験システムの再構築を行う必要が生じた。そのため、データの収集と分析が大幅に遅れており、現在も継続中である。 実験手続きは、安静時の脳波測定の後、単語の提示とイメージの指示により喚起された次の4つのプライミング条件での脳波測定を行った。また、各条件において、向社会性判断を求めた。(1)アタッチメントが喚起された安心感プライミング条件、(2)対照条件(ニュートラル)、(3)対照条件(ポジティブ)、(4)アタッチメントロス条件 プライミング条件間での脳波の比較を中心に分析を行っている。感情と脳波に関する先行研究で示されている脳波の左右非対称性が安心感プライミングにおいて見いだされるか,検討中である。
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