研究課題
本年度は、社会心理学と科学哲学の視点からフォークサイコロジーに依拠した際の問題点についての総括を行うとともに、その実践的展開のひとつとして①概念の通文化的理解の検討、②自由意志概念の通俗的理解の構造解明、③他者の心的状態のフォークサイコロジカルな理解がもたらす社会的帰結、の3点について実証的研究を行った。問題点の検討については、概念測定に際しての問題、とりわけ操作的定義の導入に当たって、通俗的な概念に対する信念体系が尺度内に混入することの問題についての分析を行った。加えて、概念の良し悪しを、一般の理解との整合性とは別の基準(研究知見の生産に役に立つ、社会の幸福に資するなど)により評価し、それに基づき「工学」する発想が求められることを議論し、「概念工学」分野の確立が必要であることを提案した。実践的展開については次の三つの実績を得た。①「ゲティアケース」を題材とした文化比較研究に参画し、「正当化された真なる信念は知識か」という問題に関する通俗的な理解の通文化性の解明に貢献した。②対人関係の中で表出されるシャーデンフロイデに対する反応を検討し、その表出の背後にある心的過程の推論に、感情の生起理由に関する通俗的信念が影響することを明らかにした。③自由意志にかかわる通俗的理解の解明に向けて、FAD-Plus、FWDSなどの尺度の翻訳と構造の検討を行い、おおむねオリジナルな尺度との共通性が得られることを確認した。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
Korean Journal of Social and Personality Psychology
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巻: 印刷中 ページ: 印刷中
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