今年度の研究では、昨年度までに作成した情報源記憶と伝達先記憶を評価する認知課題を自閉症者を対象として施行した。結果の全般的な傾向としては、当初の仮説を支持する形で、自閉症者における記憶成績の低下が認められた。特に、記憶の再認判断において確信度の判断も同時に行う場合に、実際の記憶成績と確信度が乖離するという特徴的な所見が認められた。この結果は、伝達先記憶や情報源記憶といった対人場面での記憶メカニズムに特異的に生じる現象なのか、あるいは想起が困難な情報全般に対して生じる現象なのか、いくつかの解釈の可能性が想定できる。この問題については、今後の研究において焦点をあてていきたい。 なお今年度の研究期間内には、明確な結論を出すための十分なデータを取得することはできなかったる。今後の研究において追加のデータ取得を行い、さらに詳細な解析を進めることで、自閉症者の社会性の障害にアプローチしてきたいと考えている。
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