研究概要 |
本研究の主目的は,日常生活での問題解決力の基盤の一つである認知的柔軟性(文脈状況に合わせて視点や注意を柔軟に切り替えることができる能力)に着目し,成人の学習経験が認知的柔軟性の生涯発達変化に及ぼす影響関係を解明し,認知心理学的なモデルを提案することである。 研究初年度である平成24年度は,1,000名規模のインターネットモニタ(18-77歳)を対象とした予備的調査を先行実施するとともに,学習の実態を把握するための調査として地域住民を対象としたアンケート調査(福島大学公開講座受講経験者等約300名)を実施した。研究最終年度である平成25年度には,前年度の先行調査の分析結果等を踏まえて,WEB調査(500名規模でモニタ年齢は15-29歳と1400名規模で18-79歳)を実施し,認知心理学的モデル化に向けた検討を行った。 WEB調査では,フォーマルな学習の因子として学校歴と学校での学びに対する態度(意欲度・有用度・満足度),ノンフォーマルな学習の因子として公民館等が開講する講座への参加頻度と講座での学びに対する態度,インフォーマルな学習の因子として図書館やテレビ,読書等を通じた自己学習の頻度と自己学習に対する態度をそれぞれ聴取した。日常的問題解決力としては,過去1年以内で経験した困ったできごとに対する対処策の豊富さを指標とした。フォーマルな学習に対する態度と比べて,ノンフォーマル・インフォーマルな学習に対する態度は,問題の困難度が高くなると,問題焦点型・情動焦点型の対処だけでなく,回避・逃避型の対処にも正の影響を及ぼす可能性が示唆された(但し,全てのWEB調査で認められた傾向ではないため,影響要因の特定にはさらに検討を要する)。 地域住民を対象としたアンケート調査の成果は,福島大学地域創造第25巻第1号の調査報告原稿として発表した。
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