社会的課題である大学生のフェイス・ツー・フェイスのコミュニケーション能力不足を改善するために、着ぐるみ着装により視覚・聴覚・運動能力が大きく制限されることを利用したコミュニケーション能力育成方法を開発し試行した。 研究対象は高知大学「課題探求実践セミナー・地域協働入門II(前期)」と「地域協働企画立案(後期)」受講の1年生を中心とした。着ぐるみの実技指導は演劇等で実績のある外部講師に依頼。着ぐるみは既存3体と新規1体を使用した。まずコミュニケーション力自己評価アンケートと自己紹介映像により、初期段階でのコミュニケーション能力を見極め、次に身体による感情や意志の表現方法などの実技指導と学外演習を行う。前期は着ぐるみを使ったショートショーを幼稚園と商店街で披露し、子どもとのふれ合いを行った。後期は地域でのサービスラーニングの準備段階として約1か月間の着ぐるみ演習を取り入れ、子ども向け商店街イベントでのふれ合いを実施。各授業後には、グループ及び個人の成果発表、レポート、自己評価アンケート、授業感想の映像記録により変化を確認した。 その結果、前期は10名全員、後期は9名の内7名が、授業を受け、コミュニケーション力向上と、社会への関心の高まりを持つようになったと回答。受講前後の比較でコミュニケーションの量や表現方法に明確な改善が見られた。 先進事例研究は、ちょこグループの「着ぐるみグリーティング体験ツアー」に学生3名を参加させ、学生へのヒアリングとレポートで意識変化を捉えた。その他、着ぐるみ操演者へのヒアリング調査も実施し、レッスン手法やプロとしての経験を教育プログラムにフィードバックした。 着ぐるみが生み出す他者との相互作用を重ねることで、学生は自己客観力、他者思慮力、協働達成力、社会関心力、自己突破力を高めており、着ぐるみによるコミュニケーション能力育成効果が確認された。
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