平成26年度には,再婚家庭での被養育経験のある者に対する面接調査ならびに離婚家庭,再婚家庭に関する予備的な質問紙調査を行なった。面接調査は10代,20代の男性,女性あわせて5名に対して行われた。再婚家庭に特有の家族関係ならびにそこに育つ子どもの特有の内的体験について抽出することが目的であったが,欧米各国での先行研究との共通点と異なる点とが幾つか明らかになったと考えられる。ごく少数の面接調査によるものなので一般化することは難しいかもしれないが,子どもの男女差によって新しい継親との関係の構築の困難さに違いがある傾向が改めて示唆された。この点は子どもの性別と継親の性別との組み合わせに関する検討をさらに進める必要があると考えられる。また,再婚することの肯定的な影響について,再婚によって実親が精神的に安定することで家庭が安定するという点,そして経済的に安定することなどの実際的な事柄も被調査者にとっては大きな意味があることが重ねて確認された。 本研究全体を通して新たに示唆されたこととしては以下の点があげられる。まずはじめに,死去や別離で不在となった実親との関係を何らかの形で整理しておくことがその後の新しい家庭環境で適応していくことに大いに影響を及ぼす可能性があるということである。次に2点目としては,継親との間で子どもがいかに自由に主体的自己を発揮することができるかということが,その後の継親との関係,さらには再婚した実親との関係をより良好なものとするかに影響を及ぼす可能性があるということである。そして3点目として,関係が良好であっても継親に対しては自分の親であるという感覚は持ち難く,離別あるいは死別した実親こそが自分の親であるという,言わば実親に対する忠誠心のような感覚はなくならない傾向にあるということである。
|