本年度の研究成果は以下の2点である。第1に,ほめ行為の効果についての予備実験の結果をもとに,本実験で使用する課題の検討を行った。予備実験では,ほめ・叱り行為の内発的動機づけへの効果を調べるために,間違い探し課題および創造性の課題を用いたが,内発的動機づけのみを効果の指標とするのは不十分であり,外発的動機づけ,すなわち何らかの外的なインセンティブに向かう行動を測定する課題も含める必要があると考えられた。予備実験の結果については現在論文を執筆中である。 第二に、本年度は日常場面でのほめと叱り行為の実態を調査し,その行為者の側からみた機能の分析を行うことを目的としていたが、従来ほとんど研究されていないテーマであり,調査票作成のために関連文献の精査が必要となったことから、文献研究を行った。教師-生徒および親-子関係以外でのほめと叱り行為の実態と,ほめ・叱り行為の行為者側としての経験についての実態の把握,またほめ・叱りの機能の分析を行うためには,応用行動分析の視点を体系的に含めることが有益であると考えられ,今後さらに詳細な文献研究の必要性が生じる結果となった。
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