研究概要 |
本研究の目的は,ほめ・叱り行為の行為者にとっての効果を検討することであり,これまでに,ほめ行為の行為者に与える影響についての予備実験が終了しているが,2013年度の研究実績は,第一に,予備実験の結果を5月にアメリカのワシントンDCにて開催された6th Annual Meeting of the Society for the Study of Motivationにて発表した(Tanaka, A., & Tsuyama, K. The effects of praise on the praiser’s intrinsic motivation)。ここでは,参加者にサクラとペアとなってある課題を行わせ,相手の課題の出来具合に対して,進歩や熟達をほめる群,社会的比較を用いて相対的にほめる群,単に結果を伝える群の3群にわけ,その後別の課題に対する動機づけや全般的な内発的動機づけに影響があるかどうかを調べた実験であり,Hernderlong, Ogle, & Geiger(2006)にもとづいた仮説と異なり,社会的比較を用いて相手をほめた群が,他の2つの群より,ほめた後に行った課題に対してより高いコンピテンスを報告するという効果が認められたことについて発表した。 第二に,2012年度に引き続き,ほめ・叱り行為および動機づけ行動全般の機能分析を行うための文献研究を行った。「動機づけ」についての定義を根本的に見直し,また,動機づけ研究の文脈において,ほめ・叱りにあたる報酬と罰という用語が適切に使用されていない問題について検討を行った。これらの文献研究の成果の一部は,2014年4月に出版された「心理学概論」(ナカニシヤ出版)の第6章「動機づけ」の中に反映されている。
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