研究課題/領域番号 |
24653185
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
田中 あゆみ 同志社大学, 心理学部, 准教授 (00373085)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ほめ |
研究実績の概要 |
平成26年度年度は,ほめ行為の行為者の動機づけに及ぼす影響について,大学生259名を対象とした質問紙調査を行った。ほめられ方,ほめ方の違いによって動機づけの指標(有能感・内発的動機づけ・ポジティブ感情・持続性)に効果があるかどうかを検討した。 参加者はほめられる条件とほめる条件にランダムに分けられ,さらにどのようにほめられる・ほめるかでそれぞれ3群にわけられた。努力をほめられる・ほめる群,才能をほめられる・ほめる群,そしてサムズアップをされる・する群である。Morris & Zentall (2014)に基づくと,努力をほめられた場合は才能を褒められた場合よりも動機づけが上がり,その効果は失敗後に顕著となると考えられた。また,同様の傾向がほめる条件においても認められると予想した。 参加者はまず,友人に料理を振舞う,または友人から振舞われるという状況を描いたシナリオを読み,料理がうまくいってほめられる,またはほめるという成功シナリオを読んだ。さらにそれに続いて,料理が失敗してしまうという失敗シナリオを読んだ。 その結果,ほめられる条件においても,ほめる条件においても,仮説とは逆に,才能をほめられた・ほめた群が努力をほめられた・ほめた群よりも動機づけが高くなるという有意な条件の差が認められた。ここから,先行研究で指摘されているように,才能をほめられる・ほめることで達成目標や暗黙の知能観が変化し,より相対的な評価に注目し,能力が変わらないものだと思うようになるかどうかを確かめる調査の必要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年報告したように,平成25年度に質問紙調査ができなかったことから,本年度は「研究の目的」において25年度に予定されていた行為者の動機づけに関する調査を実施した。ほめ方の違いによる効果を一部得ることができたのは大きな成果であるが,仮説とは逆の結果となったため,今後,関連性を検討する変数を増やし,再度検討する必要がある。このため,実験的検証に進む前に時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策として,平成26年度に行った調査の再調査を行い,ほめの効果についてのプロセスを明確につきとめることを第一に進める。この結果をもとに,予定されていた実験的な検討に入る。また,予定していた一般成人および塾の講師を対象としたフィールド調査については,今回の調査の結果をふまえて,当初計画していたような自由記述の形態での実態調査ではなく,フィードバックとしての行為に焦点を絞り,頻度および関連する行動の傾向を具体的に尋ねるよう方策を変更する。これにより,集計や分析の時間を短縮することが可能である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に行動実験を行う予定であったが,調査を実施した結果,仮説とは逆の結果となり,再調査をする必要が生じた。ここから,実験の実施を延長することになったため,次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
再調査およびフィールド調査,行動実験,そして成果発表のための経費に使用する予定である。
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