平成27年度は,ほめ行為に焦点をあてた3つの質問紙調査と3つの実験を実施し,行為者の動機づけとの関連を検討した。なお,ほめに関する調査や実験から重要な成果が得られたことから,叱りに関する調査や実験を展開せず,ほめの研究に絞って追試を実施する方向に研究計画を変更した。本年度の成果は以下のとおりである。 第一に,合計673名を対象とした3つの質問紙調査の結果より,ほめられる状況との比較のもとでの,ほめる行為やほめを行う状況の実態や機能が明らかとなり,また,これまでにほめられることについて明らかにされてきた暗黙の知能観や達成目標といった動機づけ要因との関連が,ほめを行うことについても同様に見られることがわかった。この結果は平成28年11月の関西心理学会で第128会大会などで発表予定である。なお研究実施計画に記した個人内の分析を目的とした質問紙調査の実施については,平成28年度6月に追跡調査を予定している。 第二に,合計223名を対象とした3つの実験の結果,これまでにほめられることについて示されてきた,ほめられ方の違いによる内発的動機づけへの異なる影響が,ほめを行う立場になった場合でも一部の指標について同様にみとめられることが明らかとなった。この結果は平成27年11月に日本子育て学会第7回にて発表され,さらに平成28年7月に開催される第31回国際心理学会議にて発表することが確定している。
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