研究課題/領域番号 |
24653187
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 相愛大学 |
研究代表者 |
高岡 昌子 相愛大学, 人間発達学部, 准教授 (10342263)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 3次元映像視聴 |
研究概要 |
先ず、裸眼で見える3D画面をもつポータブルゲーム(3DS)が人体に及ぼす負担やゲーム上の効果について調べた。大学生を対象に、3Dまたは2D画面でマリオカートをそれぞれ10分間遊ばせた後、日本疲労学会によるVAS (visible analogue scale)と、Kennedyら (1993)のSSQ (Simulator Sickness Questionnaire) 、それにOhno & Ukai (2000) で疲労評価に用いられた項目を加えて、「おもしろかった」や「臨場感があった」などポジティブな項目を加えた質問紙に回答させた。実験協力者の半分は3Dの後に2D画面でゲームを体験し、残りの半分は2Dの後に3D画面でゲームを体験した。その結果、全体的に2Dよりも3D画面でのゲームのほうが臨場感が高くなったが、楽しさでは差がなく、3Dのほうがゲームをしにくく、一層疲れるという結果であった。その疲れは目や頭において感じるもので、吐き気などの気分の悪さまでは及ばないものであった。これは画面が小さいことも要因の一つであると考えた。また、2Dよりも3Dのほうが臨場感があると感じて、さらに2Dの後に3Dを体験する場合の方が、その逆順序で体験するよりも、一層臨場感が増して、スピードも感じられるという結果であった。しかし約86%の実験協力者が2Dでゲームをするほうを好むと答えた。因子分析の結果からも、3Dの場合の方が全体的に疲労感が高かったことが示されたが、「立体」であることよりも「動き」のある画像であることによると思われる吐き気などを伴う気分の悪さにおいては、3Dと2Dいずれにおいてもほとんど生じず、差がなかったことが示唆された。以上の研究成果を学会発表して、他の研究者から意見を得て、連携研究者や研究協力者とミーティングを行い、研究を効果的に進めてきた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2012年前期までに行った実験結果を2012年9月に European Conference on Visual Perception(略してECVP)という学会で“Assessment of Glassless 3D Viewing on a Portable Game Machine”という題目で学会発表を行い、研究の進展のために必要な情報交換をしたことで生じた課題が多くあり、現在それらの課題に取り組んでいるところである。特に上記の分析により、大人であっても個人差も大きく、疲れをよく感じる場合もあるため、子どもを対象にした実験をするまえに、一層安全性の高い実験をするために慎重に実験計画を再検討する必要性が高まったので、計画を見直している。一般的に6歳以下には3Dの立体映像を見せないほうがよいとされており、「保護者による使用制限機能」も設定できるようになったゲーム機もある。このように企業も慎重になるなかで、保護者の3次元映像視聴に関する態度を調査する必要も高まり、調査すべき項目も再検討中である。
|
今後の研究の推進方策 |
大人だけでなく子どもたちにおける3次元映像視聴に関する実態調査を質問紙調査やインタビュー調査で行う。、「保護者による使用制限機能」も設定できるようになったゲーム機もあるので、子どもの3次元映像視聴に対する保護者の態度を調べることも行いたい。次に各年齢群で、3次元映像視聴態度と2次元映像視聴態度の違いを自然観察的に記録し分析して明らかにする。当初は6歳よりも小さい子どもも対象にして実験を行う計画であったが、すでに行った実験結果から、一層慎重に検討する必要がでてきたため、再検討中である。可能な方法について検討し、安全な範囲での実験を行いたい。さらに3次元映像で視聴することが認知や記憶に効果的であるかどうかを調べる実験を行いたい。3次元映像のもたらす臨場感などのメリットと疲労につながるデメリットとの両面を調べ、どの程度の視聴が認知や記憶に効果的といえるかについて明らかにしたい。 このように大人と子どもの3次元映像視聴に関する実態調査と観察そして実験を行い、データの蓄積に貢献し、得られた結果をもとに考察し、3次元映像視聴の可能性と課題について明示していきたい。そしてその成果を学会で発表し、論文にまとめて発表していきたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
2013年度に3次元映像で視聴することが認知や記憶に効果的であるかどうかを調べる実験を行いはじめ、2014年度にその実験結果を考察してまとめることになるであろう。また子どもたちにおける3次元映像視聴に関する実態調査を質問紙調査の結果を考察してまとめることになるであろう。そして得られた成果を学会発表して、他の研究者の意見を得て、連携研究者や研究協力者ともミーティングを行い、研究を効果的に進めていきたい。そして3次元映像のもたらすメリットとデメリットとの両面をおさえて、論文にまとめて、子どもにおける3次元映像視聴の可能性と課題について明示していきたい。そしてその後さらに研究していくべき点について提案していきたい。 【予定している発表題目】:「学会発表①3次元映像と2次元映像の視聴態度の違いと発達的変化」,「学会発表②3次元映像視聴の認知や記憶に及ぼす効果に関する発達的研究」,「報告書①3次元映像視聴に関する実態調査」,「論文①子どもにおける3次元映像と2次元映像の視聴態度の違いと発達的変化」,「論文②子どもにおける3次元映像視聴の認知や記憶に及ぼす効果に関する発達的研究」
|