研究課題/領域番号 |
24653187
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研究機関 | 奈良学園大学奈良文化女子短期大学部 |
研究代表者 |
高岡 昌子 奈良学園大学奈良文化女子短期大学部, 幼児教育学科, 教授 (10342263)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | グラスレス3D映像視聴 / 携帯型ゲーム機 / 疲労感 / 発達 / 幼少期のゲーム経験 / 記憶認知 / 縦断的 / 視覚 |
研究実績の概要 |
平成26年8月には ECVP(The European Conference on Visual Perception)において「The effect of video game experience in earlier childhood on fatigue with a portable 3D game machine」という題目で発表した。ここでは実験協力者が初めてゲームを経験した年齢を質問したところ、平均は6.5歳であった。その平均より早い者を早期ゲーム開始群、遅い者を後期ゲーム開始群として、その両者の携帯型ゲーム機(3DS)のグラスレス3D映像視聴による疲労感を比較したところ、早期ゲーム開始群の方が疲れにくい傾向がうかがえた。この結果から幼少期のゲーム経験がその後のゲーム体験に何らかの影響を及ぼすことが示唆された。 また平成26年度には、「携帯型ゲーム機のグラスレス3D映像視聴による影響」という題目で紀要論文を出した。ここでは携帯型ゲーム機(3DS)のグラスレス3D映像視聴が人体に及ぼす影響やゲーム上の効果について述べた。2Dの後に3Dを体験する場合の方が、その逆順序で体験するよりも臨場感が増して、スピードも感じられるという 結果であった。そして全体的に2Dよりも3Dでのゲームの方が臨場感が高かったが、楽しさでは差がなく、3Dよりも2Dでゲームをすることを好む者の方が多かった。VASの結果から3Dの場合の方が全体的に疲労感が高くなることが示されたが、「立体」であることよりも「動き」のある画像であることによると思われる吐き気などを伴う重篤な気分の悪さは、3Dと2Dいずれにおいてもほとんど生じず、差がないことが示された。この結果から子どもを対象にした実験の可能性を慎重に検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年4月に新しい職場に異動したために、環境が全く異なり、予定通りの研究遂行が予想以上に困難となった。そのため結局昨年度には、まず研究を進めるための地盤づくりを行った。そして今までの研究成果を学会発表して、紀要論文として発表したところでおわり、追加の調査と実験をすることがほとんどできなかったが、これらの活動によって課題が明確化したので、残りの期間を無駄なく有効に活用できるようにして研究を進めていきたいため、補助事業期間延長申請をすることとなった。そのため最も研究を進められる3月に研究費を一時的に使用できなくなったことは残念であったが、補助事業期間延長申請を承認していただけたので、今年度こそ予定していた調査と実験を行い、研究をさらに発展させて今後につなげていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
今年度には追加の調査と実験を行いたい。グラスレスで3Dを視聴できるテレビは一旦市場に出たが、結果的に広く出回らなかったため、グラスレス3Dテレビよりも広く出回っている携帯型ゲーム機3DSのほうが、子どもたちのグラスレス3D視聴頻度が高いので、今後は携帯型ゲーム機3DSに関する調査のほうを主に行いたい。一般的に3DSにおいては、6歳以下の子どもは3D映像視聴を制限するように書かれているが、その制限はあくまで保護者に委ねられているため、実際には3Dのグラスレスで視聴をしている6歳以下の子どもも見られるのが現状である。したがって、将来的に、子ども時代にグラスレスで3D映像視聴を日常的に経験した子どもたちと経験しなかった子どもたちが、大人になったときに示す3D映像視聴に対する態度や疲労感等を縦断的に調べていきたい。そのための調査として、現在におけるグラスレス3DSの視聴経験に関わる実態調査を行ってデータを蓄積しておきたい。また子どもたちを実験協力者とした実験を行いたいが、これは目への悪影響の可能性から慎重にならざるをえず、許可がなかなか得られないため難航している。そのためまだ少数のデータしか集めることができていないが、さらに検討して追加の調査や実験を行いたい。そして実験調査協力者の子どもたちが大人になるまで縦断的に研究していきたい。またグラスレス映像視聴が記憶認知に及ぼす効果についても実験して結果をまとめていきたい。 現在、3Dの映像視聴に関わるデータをもとに論文を作成中であるので、今年度も論文としてまとめて発表したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度4月に新しい職場に異動したため、環境が全く異なり、予定通りの研究遂行が予想以上に困難となった。その結果、昨年度は研究を進めるための地盤づくりを行い、研究成果を学会発表して、紀要論文で発表したところで終わった。またグラスレス3D映像視聴を子どもを対象に行う研究の難しさに直面して、その研究の方法や可能性について多くの研究者に相談して検討してきた。これらの活動によって、課題が明確化したので、今年度は可能な範囲で慎重に残りの調査や実験を行い、研究を発展させて、今後につなげていきたい。
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次年度使用額の使用計画 |
今までの本研究活動によって明確になってきた課題に焦点をあてて研究を発展させていきたい。そのために必要な追加の調査と実験を今年度にこそ行いたい。具体的には調査・実験協力者へ支払う費用や機器にかかる費用、学会参加のために必要な諸経費等を残りの未使用額で支払いたい。 グラスレス3D映像を刺激とする実験は子どもを実験協力者にすることに問題があるため、実験を遂行することに大変慎重になっている。そのため子どもではなく実験協力者となった大学生に子どものころの経験を聞いて、幼少期における体験と3D映像視聴における疲労感等との関係を検討してきた。今年度こそは子どもの実験協力者を一層集めて、3D映像視聴に関するデータを取り、保護者の方に質問する等の実態調査を実施したい。
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備考 |
補助事業期間延長承認:平成27年3月20日
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