研究課題/領域番号 |
24653189
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
山中 克夫 筑波大学, 人間系, 准教授 (50282314)
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キーワード | cognitive stimulation / CST |
研究概要 |
Cognitive Stimulation Therapy (CST)は,認知症高齢者を対象とする医療・介護現場で,参加者とスタッフがともに楽しみながら,認知機能,社会的機能,QOLの改善を目指した集団心理療法である。これまで筆者は,CSTの日本語版であるCST-Jを開発するとともに,CST-Jに参加した認知症高齢者に対し,認知機能,QOL,気分に関する尺度を用いて,量的変化を中心とする解析を行ってきた。しかし,近年では,このような心理社会的な介入の活動に対して,参加している認知症のある本人自身が,介入の活動をどのように認識しているかがより重要視されるようになっている。そうした質的研究に関して,我々の研究ではこれまで小規模な予備検討にとどまっていたが,今年度は対象数を増やし調査研究を実施した。その結果,認知症のある対象者のうち,特にごく軽度・軽度のレベルの人々の多くでは,介入の活動の場面とは独立した場面でインタビューした場合であっても活動に参加していることを認識しており,内容の一部を理解していることが明らかにされた。 また,年度の後半では,最終年度で行う予定であるCST-Jの効果に関する介入者間般化について研究の準備に取り組んだ。具体的には,協力機関の介入スタッフを中心に,筆者がリーダーを行うCST-Jの実践を見学してもらい,同時に非薬物的介入やCST-Jに関するミニレクチャーを行った。また,協力機関において職員向けの講演・説明会を開催したり,中核的な協力機関のスタッフに現時点のマニュアルを配り,内容や表現について理解のしやすさについて確認を受けた。くわえて,利用する尺度のうち,海外のもので日本版が無いものについては,開発者と連絡を取り合い使用や開発について協議を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
介入の活動について,実際,認知症のある本人自身がどのように認識できているのか。近年,こうした質的研究は,すでに報告されている英国でのCSTに関する論文のアクセス回数の多さなどから特に注目されていることがわかる。この点について,今年度での取り組みから,CST-Jに対する認知症の本人の認識について一定の成果を得ることができた。また,最終年度で行う予定である,CST-Jの効果に関する介入者間般化に関する研究の準備を進められたことも今年度の成果と考えられる。しかし,利用する尺度について,海外では優れたものが次々に開発されている。それらの日本版は存在しないものが多く,研究を実施するうえで開発の必要性が生じた。そのため,当初最終年度に予定されていた研究に加え,そうした尺度開発のための新たな期間が必要となった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は最終年度に当たるが,まず利用する尺度のうち,海外のもので日本版が無いものについて開発研究を行う。同時に,CST-Jの効果に関する介入者間般化に関する研究のための研修ツールやシステムの開発を行っていく。続いてon-the-jobトレーニングを中心とし,介入者への研修を実際に行う。その際,原開発者を海外から招聘する予定である。その後,CST-Jの効果に関する介入者間般化に関する研究を実施する。ここでは,将来的により大規模なRCTを行うために必要なデータを収集することも目的とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度、研修ツールの構築のために使用するはずであった分の一部について論文のオープンアクセス化等で使用したため、若干全体の残が足らなくなり、次年度にまとめて使用することにした。 残額を研修ツールの構築のために使用する。
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