本研究(平成24年度~平成26年度)の3年目である平成26年度の目的は、新しく開発された大学生の人間的成長を測定する尺度を利用し、人間的成長を規定する要因について検討し、また、その結果を踏まえ、大学生の人間的成長を図るためのガイドラインを作成することである。主な成果は次のとおりである。 1)人間的成長を規定する要因を検討するための予備研究として、大学生を対象に人間的成長が促進された理由・原因をリサーチし、その結果をもとに要因尺度が作成された。 2)大学生を対象に要因尺度と人間的成長を測定する尺度(「対人関係形成力」「精神的健康力」「他者尊重力」「忍耐力」「思考力」「生活力」)を実施し、要因尺度について因子分析を行った結果、「理解者との出会い」「未来展望の獲得」「親からの分離」「コミュニケーションの経験」「専門的学習の経験」「ゆとりの実感」の6因子が抽出された。6因子に基づき下位尺度が構成され、要因尺度は高い信頼性を備えていることが確認された。 3)要因尺度と人間的成長を測定する尺度の両者の関係性を検討するために、共分散構造分析によるパス解析を行った結果、「理解者との出会い」「未来展望の獲得」「親からの分離」「コミュニケーションの経験」「専門的学習の経験」「ゆとりの実感」は人間的成長に有意な正の影響を与えることが示された。 4)結果を踏まえ、ガイドラインとして「コミュニケーション機会の提供」「ゆとりの尊重」「キャリア教育の推進」「ピア・サポート制度の普及」「専任カウンセラーの十分な人数の配置」の5項目について提言された。
|