研究課題/領域番号 |
24653195
|
研究機関 | 兵庫教育大学 |
研究代表者 |
海野 千畝子 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (30584875)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 国際情報交換 |
研究概要 |
今年(24年)度は、被虐待児童への動物介在療法実施以前に、大学生に疑似動物介在面接を実施することで、研究の方向性や被虐待児童への動物介在療法実施の留意点を明らかにした。結果は、学会等で発表を行い感想意見を聴取した。以下に実施発表した研究内容を記す。 大学生への動物介在疑似面接における質的研究 目的は、動物介在療法の実践における普遍的に留意する視点を発見することであった。内容は、大学生に被虐待児童役割を演じてもらい、本来は被虐待児童に行う初回面接や生育史聴取等を実施し、疑似治療面接の場面設定の中で介在犬と接触(触る・共に存在)するゼミを行った。複数回の実施における学生の個人的な経験や内的現象、その推移等、の半構造化面接を行った。 結果の分析方法はKJ法を活用した。結果、留意するべき視点は、情緒、身体(皮膚)感覚・関係性的内容については1.犬を見ること触ることで、安心、安全、過去(外傷トラウマ)から現実にひき戻ることが可能となること、2.継時的に犬との健康な愛着が形成されること3.トラウマ刺激のフラッシュバック想起を犬の存在が加わり、健康に塗り替えられること等、である。現実の生活へ反映的内容は、1.日常生活での動物への愛着、動物との関係性が深化すること、2.ゼミ生間における動物介在が意味をもつこと3.犬嫌いや苦手意識を暴露され変容する可能性があること、等が明らかになった。総合考察として、虐待を受けた児童の役割は、過去の学生自身の中の生育の不快体験と結び付きフラッシュバックする。これを利点として捉え、虐待を受けた子供の面接に犬を介在させる際、留意するべき視点が明らかになった。犬を見て、触れるその存在性が過去の脅威や不安衝撃から不快耐性を広げ、また現実感を取り戻す契機となる。そして平行して信頼、暖かさ、コミカルさ、等を与える機会となることを発見した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.海外のカナダエドモントンにある、被虐待児童への動物介在療法を実施している臨 床施設の臨床心理士から情報収集を行った。 2.研究実績の概要で記した、被虐待児童への犬による動物介在療法の留意点をもとに 被虐待児童が集まる、情緒障害児短期治療施設を研究対象機関とし設定し、被虐待児 童への愛着形成を目的とした動物介在療法を実践するための接触を開始している。
|
今後の研究の推進方策 |
児童養護施設等へ出向き、被虐待児童への動物介在療法を実践する。 その事例研究と共に、児童の施設担当の職員を対象に、子どもの愛着行動における変化を子どもの行動チェックリストCBCL(child behavior checklist)、CDC(child dissoiaetion checklist)等を活用して調査し統計的に比較検討する。 これらの結果を包括し、被虐待児童への動物介在療法が、愛着形成の樹立と信頼関係の構築に寄与するか、の実証的研究を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
24年度以前における学会発表や代表者が研究会等で、犬による動物介在療法の研究実践フィールドを募り協力を得た児童養護施設等において、被虐待児童への動物介在療法を実施する。被虐待児童へ同様の動物介在療法による臨床心理面接を行う。 1.被虐待児童への動物介在療法の質的研究(事例研究) 動物介在療法と個人の事例を児童の健康な愛着形成の構築と信頼関係の樹立の視点から質的に分析を行う。臨床心理面接の中で起きてくる現象を個々の事例研究的に検討し質的に考察する。 2.被虐待児童への動物介在療法による愛着形成の構築に関する量的質的研究 児童の施設担当職員に日常の愛着行動の増加や信頼関係の構築の程度を動物介在療法 介入群、と介入無群に前後半年の子どもの行動チェックリストCBCL(child behavior checklist)等を実施し愛着行動の差異について統計的に分析し、被虐待児 童への動物介在療法により児童の愛着行動が増加するかについての実証的研究を行う。また対象児童のの情緒や行動の動物介在療法前後の変化に対して、施設職員へのインタビュ-調査を行い結果を質的に分析する。
|