研究課題
本研究は,南極越冬中の隊員におけるストレスの詳細とその対処を調査することにより,(1)閉鎖環境での長期生活によって生じる心理的課題を明らかにし,(2)遠隔地への心理的支援の可能性を検討すること,さらに,(3)越冬隊員への帰国後の再適応のための心理的サポート体制を構築し,遠隔地での長期生活から日本に再適応する際の心理的負荷と支援策を見出すことを目的とする。平成26年度の研究成果は,以下の3点である。1.【第54次越冬隊員に対する心理調査の分析】越冬隊員29名に施行した心理調査の分析を行った。調査時期は,2012年11月(出発前の日本),2013年3月(越冬初期),6月(極夜前後),7月(冬季),9月(春季),11月(白夜期),2014年3月(帰りの船内)の合計7回であった。調査用具は,(1)気分の状態を調べるPOMS,(2)対人交流パターンを調べる新版TEG-Ⅱ,(3)ストレス対処を調べるCOPE,(4)パーソナリティを調べるバウムテストであった。(1)POMSから,怒り‐敵意が白夜期に上昇したこと,(2)新版TEG-Ⅱから,物事を客観的に捉える心理状態を示すAの値が極夜期に上昇したこと,(3)COPEから,第54次隊は主に,行動的対処,計画,受容によるストレス対処を用いていたことが明らかになった。2.【第54次越冬隊員に対する面接調査】個々の隊員の越冬中および帰国後のストレスの詳細を把握するため,研究協力を承諾した第54次越冬隊員12名に対し,2014年12月に半構造化面接による調査を施行した。3.【成果の公表】2014年7月に,国立極地研究所主催の南極医学医療ワークショップにおいて口頭発表2件,同年8月に,ニュージーランドのオークランドで開催された南極科学委員会主催の学術集会で口頭発表2件を行い,2015年3月に文献調査の成果を『人間科学:大阪府立大学紀要』に掲載した。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件)
人間科学:大阪府立大学紀要
巻: 10 ページ: 123‐141