我々は児童虐待を防止する目的で,近年「虐待の難治例に存在する」といわれている「母親自身が発達障害をもつ家庭」への子育て支援プログラムを開発した。具体的には、母親が発達障害と診断されている対象家族に「家族描画法」を実施し、その様子をビデオカメラに収め、後に夫婦を交えて検証するというものである。 本研究(プログラム作成)が目指すものは、実施を通して夫婦相互扶助力が高まることであり、さらに家族の諸問題を好転へ導くことであったが、実際にこのプログラムを行った家族の夫婦関係や家族の問題は好転していることが事後のアンケートにより把握できた。なお、本研究の研究対象(協力)家族は健常者1家族への試行実験を含めて6家族であった。 初年度の平成24年度には、プログラム案(素案)の作成、健常者家族への試行実験、研究対象家族を募り選定するためのイベントなどを行った。平成24年度・平成25年度を通して、3家族(事例)へプログラムを実施したが、家族の形や母親の障害の程度は様々であるものの、どの家族にも有効であるよう工夫する必要があるため、1家族が終了する毎にプログラムに改良を加えた。最終年度の平成26年度には、実施協力の希望をしながらも結果的に応じることができなかった2家族(母親)への聞き取りを行い、プログラムの限界を把握した。また、その内容を最終的なプログラムに取り入れた。これらのプロセスを通して最終的なプログラムを完成させることができた。 また平成25年度・平成26年度、日本LD学会(第22回大会・第23回大会)において学会発表を行った。平成25年度は実施1事例(1家族)、平成26年度は実施2事例(2家族)について、それぞれのプログラムの内容および修正点を事例検討方式で報告した。 今後は本プログラムを社会に適用させるために、子育て支援機関の現場スタッフによる実施と検証を行う必要があると考えられる。
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