研究課題/領域番号 |
24653208
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研究機関 | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
堀越 勝 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 認知行動療法センター, 研修指導部長 (60344850)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 強迫性障害 / 認知行動療法 / 家族 |
研究概要 |
強迫性障害(以下OCD)は難治性の精神障害で、家族を巻き込み、家族機能を低下させることでも知られている。本研究の目的は、OCD治療に対する第一選択として提示されている曝露反応抑制法(以下ERP)を実施し、その安全性と有効性を明らかにするとともに、OCD患者を抱える家族に対する実態調査と介入研究を実施することにより、患者本人だけでなく、OCD患者への介入を含めた統合的で有効な新しい治療モデルを構築することにある。本研究で得られた家族の巻き込まれの実態や家族機能に関するデータにより、OCD治療やその研究に寄与する有益なツールを提供できるほか、OCDの重症化への予防や良好な予後、家族機能の回復に大きく貢献できる治療モデルを提供できる。 今年度はOCDに関する情報提供のベースとなるウェブを立ち上げたほか、専門職を対象としたOCDに対する認知行動療法に関する研修を6回実施し、OCDの情報提供を行った。また研究代表者が国際OCD財団(International OCD Foundation)を訪問し、OCDの最新情報の提供や今後の連携を図るために、関係者との協力体制を構築した。臨床研究においては、同意を得られた13名のOCD患者に対してERPを実施した。このうち終了した7ケースでは、患者のOCD症状を評価するY-BOCS(Yale-Brown obsessive Compulsive Scale)が有意に改善した。さらに、OCD症状への患者家族の巻き込まれや、患者への対応ポイントを掲載した家族用資料を作成し、家族向けに心理教育を実施した。 また、OCD患者家族の巻き込まれ尺度(FAS)とOCD患者の家族機能尺度(OFF)の日本語版作成に関して、FAS、OFFそれぞれの原著者から許可を得て翻訳を実施し、バックトランスレーションを完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
強迫性障害(以下OCD)に関するウェブを立ち上げ、患者やその家族向けにOCDの症状や治療、患者への介入ポイント、推薦資料などの情報を掲載した。また治療者向けに、国際OCD財団が発行するニュースレターを翻訳し、専門情報を掲載した。専門職向けの研修として、OCDに対する認知行動療法に関する研修を6回実施し、曝露反応抑制法(以下ERP)や薬物療法、OCDに関わる家族の影響などを紹介した。さらに、OCDの最新情報の提供や今後の連携を図るために国際OCD財団との協力体制を構築した。 臨床研究においては、13名のOCD患者に対してERPを実施した。このうち終了した7ケースでは、患者のOCD症状を評価するY-BOCS(Yale-Brown Obsessive Compulsive Scale)が有意に改善した。さらに家族用資料を作成し、家族向けに心理教育を実施した。 OCD患者家族の巻き込まれ尺度(FAS)と、OCD患者の家族機能尺度(OFF)の日本語版作成に関して、FAS、OFFそれぞれの原著者から許可を得て翻訳を実施した。現在バックトランスレーションが完了し、原著者が確認中である。来年度の日本語版標準化に向けて、FASとOFFを実施する機関が決定している。 以上の実績を踏まえ、当初の計画どおり研究はおおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
OCDの患者家族への介入を含めた統合的で有効な新しい治療モデルの構築に向けて、引き続きOCD情報の発信や収集を行い、家族の巻き込まれ尺度日本語版、家族機能尺度日本語版の標準化や、家族介入プログラムの臨床試験を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
現在OCD患者家族の巻き込まれ尺度(FAS)と、OCD患者の家族機能尺度(OFF)の日本語版を作成しており、次年度の研究費は、両尺度のバックトランスレーション担当者への謝金として使用予定である。
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