研究課題/領域番号 |
24653210
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
関 義正 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (50575123)
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キーワード | 実験心理学 / コミュニケーション |
研究概要 |
セキセイインコのコミュニケーションにはヒトのコミュニケーションと類似した数多くの点がある。一般に実験動物としても用いられるげっ歯類とは異なり、これら2つの動物種はともに嗅覚への依存度が少なく、視聴覚情報を優位に用いてコミュニケーションを行う。 そのため、本研究課題のうち、当該年度の研究では、通信回線を用いた視聴覚コミュニケーションのモデル動物としてセキセイインコを確立すること、および、セキセイインコのコミュニケーションにおいて用いられる視聴覚情報のすべてをモニターできる系を確立する目的で実験を行った。 この実験を行うにあたり、通信回線で接続された二つの防音箱にそれぞれ1羽ずつのセキセイインコを入れ、互いの様子を視聴覚情報としてリアルタイムで提示した。情報の取得には小型CCDカメラと小型指向性マイクを用い、情報の提示には小型液晶ディスプレイと付属のスピーカーを用いた。その際の通信回線に流れたデータのコピーをすべて記録し、それらデータについて解析した。オス‐オス、オス‐メス、メス‐メスの各条件につき、4ペアずつを用いて実験を行った。被験体相互の行動に見られる相関を見るために、解析はMATLAB上で動くオリジナルのプログラムおよび、実験者による行動ラベリングによった。また、ヒトの社会で見られる通信回線を介したコミュニケーションへの依存性と比較するために、社会的な隔離が視聴覚情報に対する注意を喚起するのかどうか検討した。 当該年度終了時点において、解析の途中であるが、すべての条件に共通する個体間の行動の同期・同調は見られていない。しかし、社会的な隔離が視聴覚情報への応答を強める傾向が見られたため、今後はこの点に重点を置いた研究を展開する予定である。 暫定的な結果をニューカッスルで開催された動物行動学会大会(Behaviour2013)で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
動物の行動の変化について、実験者による観察で得られる印象とMATLABプログラムによる自動的な画像解析の結果が一致しないため、その原因の解明、および解釈を検討することが必要になっている。このために、予定よりも時間がかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
社会的な隔離により視聴覚情報への依存度を高まるのかどうかを、より直接的に検討するために、オペラント条件付け技術を用いて、液晶モニターから提示される他個体の視聴覚情報の強化力を検討する。つまり、相手との通信を可能にするボタンを用意し、インコが自発的にそれをつつくという行動がみられるかどうか、また、その行動が観察される程度についても調べ、コミュニケーションがとれるということがどの程度の強化力を持つのかを検討する。 加えて、発声行動についての解析を進め、通信回線を介したコミュニケーションにおける鳴き交わしのタイミングを解析する。このことにより、身体運動の解析からだけでは検出することが難しいコミュニケーション過程についても検討し、視聴覚情報によって生じる間接的なコミュニケーションに関わる行動全体について、より高い精度で検出することを目指す。 これらの結果についてまとめ、学術誌上で発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
コンピュータによる画像解析と実験者による観察の不一致が生じる理由の解明に時間がかかっており、この問題の原因を特定してから、解決に必要な物品を選定・購入しようと考えたため、予算の執行を控えた。また、同じ理由で論文の執筆が遅れており、発表に関わる諸費用を持ち越した。 さらに、当該年度の途中において次年度初めからの研究代表者の所属変更が内定した。移転にかかる費用などを検討した結果、新たな設備の一部については、その購入を所属変更後にしたいと考えたため、当該年度使用予定額の一部を持ち越した。 オペラント条件付けに関わる物品の購入および、画像解析処理を加速するために必要なコンピュータおよびソフトウェアの充実にかかる諸費用に充てる。また、論文の執筆、英文校閲および出版に関わる諸経費に用いる。
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