研究課題/領域番号 |
24653219
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
倉片 憲治 独立行政法人産業技術総合研究所, ヒューマンライフテクノロジー研究部門, 研究グループ長 (90356931)
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キーワード | 聴覚 / 音響心理 / 音の大きさ / 聴覚モデル / 高齢者 / 加齢効果 / 騒音評価 |
研究概要 |
平成25年度は,23年度までに収集した実験結果の分析を進め,26年度以降に開発する騒音評価方法に使用する,聴覚特性の基礎資料を整備した。その実験では,音響条件の統制された無響室内にてスピーカから純音(ある単一の周波数をもつ音)を若齢及び高齢の被験者にそれぞれ提示し,知覚される音の大きさ(ラウドネス)の判断を求めた。そして,さまざまな周波数及び強さ(音圧レベル)の純音を用いてこの測定を繰り返すことにより,等ラウドネスレベル曲線(同じ大きさに聞こえる周波数と強さの音の組合せを示す曲線)を可聴範囲(聴取可能な音の周波数と強さの範囲)全体にわたって求めた。ここで得られた測定データは,近年の高齢者を対象にラウドネス特性を体系的に調べた,他に類のないものである。その成果は,査読付き論文1編として投稿し,掲載が確定した。 さらに,その等ラウドネスレベル曲線をもとに,加齢変化を考慮した新しい騒音評価方法の予備的検討を進めた。この予備的検討では,現実に存在するさまざまな騒音(自動車騒音,環境騒音等)に対して若齢及び高齢の被験者が評価した音の大きさを,等ラウドネスレベル曲線に基づく指標で的確に予測することを狙った。その結果,従来の騒音評価指標(騒音レベル,A特性音圧レベル)では評価できなかった,騒音の大きさ知覚の加齢変化を的確に予測できる可能性が示された。 平成26年度は,その予備的検討の結果をもとに,開発する騒音評価方法をさらに精緻化し,実用レベルに高めることを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
近年の高齢者のラウドネス特性を体系的に調べることができ,またそれに基づいて開発する騒音評価方法の予備的検討では,従来指標よりも良い精度での予測が可能であることが見込まれることから,本研究はおおむね計画どおり,あるいは計画よりやや先んじて進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は,25年度に得られたラウドネス特性の加齢変化の測定データ,及び実騒音に対する適用可能性の予備的検討の結果をもとに,開発する騒音評価方法をさらに精緻化し,実用レベルに高めることを目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
被験者実験を新たに実施する代わりに,すでに収集したデータの解析及び論文作成を行った。そのため,当初予定していた謝金の支出が無くなった。 当初計画よりも研究がやや早く進捗しているため,その成果公表のために,論文投稿及び学会発表の費用に充てる計画である。
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