平成27年度は、平成26年度に研究対象グループとした筆者担当の基礎英語クラスを履修した1年生のうち、2年次も続けて筆者担当の実用英語クラスを履修した学生7名を含む2クラス、計29名を対象に「多読to読書」の継続研究を行った。研究対象グループは、平成26年度は経営情報学部、情報メディア学部、医療情報学部の学生の混合クラスであったが、平成27年度は医療情報学部の学生のみとなった。特に平成27年度に関しては、YA文学およびクロスオーヴァー文学導入以降の「to読書」の過程についての実践および研究を中心に行い、年度末には2年間の成果を確認するためにアンケートとインタビューを行った。 また、学生の活動の補助として、図書館の英語多読学習用書籍の近くに、関連の和書を展示する、「多読to読書」のコーナーを設けたほか、プロジェクトの趣旨や、英語多読学習、YA、クロスオーヴァー文学の説明などに加え、大学図書館所蔵の英語多読学習用書籍のリストと、その和書、関連図書の有無を紹介するウェブサイトを開設した。また、1年目の研究結果について分析し、論文化した。 アンケートとインタビューの結果、2年間プロジェクトに参加した学生でも、教員からのすすめや、読書時間の提供がなければ、自律して読書を行う学生は極めて少ないということがわかった。また、それは、学生が読書を嫌い、意図的に避けているからではなく、学業や資格対策、そして生活のためのアルバイトに追われ、読書に費やす時間がない、ということもわかった。ただ、逆説的にではあるが、授業内に読書をすすめたり、そのための時間を若干でも提供した結果、ウィリアム・シェイクスピア、マーク・トゥエイン、サミュエル・ベケットといった作家に手を伸ばす学生が出てきたことは、大学に至っても、教員が読書を勧めることの意義を浮き彫りにしたと言えよう。
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