研究課題/領域番号 |
24653238
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研究機関 | 九州産業大学 |
研究代表者 |
井上 友子 九州産業大学, 芸術学部, 教授 (90330787)
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研究分担者 |
星野 浩司 九州産業大学, 芸術学部, 准教授 (60552205)
青木 幹太 九州産業大学, 芸術学部, 教授 (70159276)
佐藤 佳代 九州産業大学, 芸術学部, 准教授 (70454907)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 地域産業 / 企業連携 / 実用化 / 商品化 / ワークショップ / 中間報告 / 最終成果報告 |
研究概要 |
本研究は、九州の地場産業の低迷が進み、継承されるべき技術の断絶や衰退現象が著しく見られ、地方性を備えた伝統の消失が懸念されるという顕在化する社会問題を背景としている。これは、地方大学卒業者の地元就職率低下に影響し、多くのフリーターを作り出す深刻な問題を引き起こす要因となっている。そこで、大学の立場を活かした地元企業の活性化と人材育成を目指す企業連携実践プログラムを実施した。 芸術系学部を備える総合大学、あるいは芸術系大学のカリキュラムを調査し、企業連携を基本とした実践力養成講座がほとんど存在しないことを確かめ、以下のようなプロジェクト活動を実施した。 九州産業大学芸術学部は美術・デザイン・写真映像の3学科を備えており、造形/創造、企画/立案、画像/映像記録などの融合的アプローチで教育プログラムを実践することができる。本研究課題に於いては、これらの特質を活かし、以下のような8個のプログラムを実施した。 1博多織先染め帯のデザイン「八寸名古屋」「小袋」2後染め帯のデザイン「おしゃれ着用帯」3伝統工芸「博多織」普及のための子供を対象としたワークショップ 4久留米がすり半纏の新しいイメージ構築 5博多人形再生 6若者をターゲットにした新しい大川家具「女子家具」「男子家具」7福岡とその周辺地域の伝承技術の取材「博多包丁」「泥染め」「博多織」8福岡の日本酒蔵元を取材したCMワークショップ 以上の活動は「中間報告」を学内ギャラリーで、「最終成果報告」を天神の商業施設で行った。「最終成果報告会」は、低迷する地元企業の活性化を模索するアカデミックな活動としてメディアに取り上げられ話題となった。本活動は実用化や商品化に至ったことからも確実な実績となり、地場産業の活性化への貢献や、実社会で学ぶ機会を学生に与えることに寄与したと考えている。現在は、活動をカリキュラムに反映するべく模索中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の計画(1)~(6)のうち、(1)のカリキュラム調査およびサンプル入手については25年度も引き続き実施し、(2)専門領域の特性分析については、(3)~(5)の実施を踏まえて整理・報告する。(3)(4)(5)の地場産業の調査および学生参加型実験プログラムの構築については、企業との連携による実践的活動の成果が新聞紙上に取り上げられるなどの反応を得ることができ、期待通りの結果となっている。 (6)の大学院における実験的領域横断科目開設については、カリキュラム変更に時間がかかることから、まずは既存の科目「博士前期課程 プロダクトデザイン特定演習I」にガラス工芸「粋工房」との連携活動を取り入れ、実践強化の内容へと更新している。 さらに、学部授業での企業連携活動の取り込みについて模索中であるが、学外活動を中心に「大川家具」「博多人形」「博多織帯」「久留米がすり半纏」などのリニューアル・イメージづくりを基本とした商品化プロジェクトを実行し、実践型の教育を行なっている。 また、本研究の活動報告は中間報告を大学内スペースにおいて、年度の最終報告を天神中心地区の商業施設で開催し、大きな反響を得ている。加えて、2013年6月に開催予定の日本デザイン学会第60回春季研究発表大会において、実績報告を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
学生たちの地場企業への理解と知識を進めるため、研究会や研修会を開催し、基本知識を得た上で、活動に取り組むことができる体制を用意する。 平成25年度の計画“本格的な美術系芸術学部に於ける専門領域横断型カリキュラムの実施の可能性を確実なものとし、応用面での検討を具体化していく”ために(1)の活動地域と活動範囲を福岡中心の地域から九州全土に拡大し、(2)の実戦的訓練の実施と公表をより効果的で充実した内容へと昇華するべく実践的連携活動を強化する。また、前年度に取り組んだ、地元企業の業種を拡大し、様々な業種を取り込む。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に予定されていた執行額は、当初、最終成果報告会の会場貸借費が不明確であったため、研修会実施にかかる謝礼および公表会時にかかる人件費を節約し、その結果、余剰額が生じた。研究最終年度となる25年度は、前年度と同じ商業施設を貸借し最終成果報告会を実施する予定であるため、会場貸借費の予測が可能である。そのため、25年度予算では、学生の学習及び研究活動に関わる研修会や講演会等に対し多くを執行し、より密度の高い研究結果を得るべく活動して行きたい。 平成24年度の残金¥109,021を加えた平成25年度の地場産業活性化のための実践的領域横断型教育プログラムは、以下のような研究費の使用計画に基づき執行される。 1.研究会や研修会に協力を要請する伝統工芸士や技術者などへの謝礼 2.成果物作成および展示のための消耗品費 3.成果公表時の什器作成費および人件費 4.成果物搬出入時の運送費 5.公表会の会場賃料 6.連携企業が提供する陳列商品の保険代 7.公表開示の監視にかかる人件費 8.調査および学会発表等の旅費
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