研究課題/領域番号 |
24653240
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研究機関 | 国立教育政策研究所 |
研究代表者 |
立田 慶裕 国立教育政策研究所, その他部局等, 研究員 (50135646)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ナラティヴ学習 / 生涯学習 / 教育効果 / デジタル・ストーリーテリング |
研究概要 |
本研究はナラティヴベースドアプローチの視点に立って、(1)成人教育の領域における多様なナラティヴ学習を対象として各国の事例を調査するとともに、(2)ナラティヴ学習プログラムの多様な教育効果を評価し、分析・考察することを目的とする。 そのため、今年度は、下記の研究を行った。 (1)国内の事例をナラティヴ関連研究者への面接調査として、北海道や富山を中心に行った。また、海外の事例としては、前年度の自主的な研究の成果として『成人のナラティヴ学習』を刊行し、その著者である米国のナラティヴ学習の専門家マーシャ・ロシターとキャロリン・クラークと韓国のナラティヴ学習の専門家のナラティヴ・シンポジウムに協力し、その研究成果をまとめた。 (2)実験的開発研究として、東京都霞ヶ関ナレッジスクウェアと、富山のインターネット市民塾の二つの会場を利用し、デジタル・ストーリーテリングの講座をそれぞれ二度開催した。各講座では、東京5名、富山3名の受講者を得て、第1回は、受講者のライフストーリーを中心にグループワークを行い、第2回はその物語を写真と音声によるナレーションをつけて、iPadを用いて、デジタル・ストーリーとして完成し、発表後、意見交換会を行って相互のナラティヴから学び、自らのライフストーリーの変容を促した。 この学習については、音声録音と録画を行い、学習者の属性、学習経験、意識変容、行動変容の4つの視点から、現在分析中である。この実験研究の成果を踏まえて、次年度は、自分史制作かキャリアアップのナラティヴ学習の研究を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付時の計画は、次の二点であった。 (1)ナラティヴ学習に関する各国の事例調査:本年度は、ナラティヴ学習に関する米国の事例研究を行う。多様なテーマに関するナラティヴ学習の文献を整理すると共に、米国のナラティヴ学習の専門家への面接調査を行い、ナラティヴ学習の教育的効果に関する理論的基礎を固める。(2)ナラティヴ学習プログラムの教育効果の実験研究「デジタル・ストーリーテリング」(DST)、「自分史制作」の2テーマについて、40代~50代の成人を対象とした講座を2カ所で開設する。各講座10~20人の受講生を集め、前述の効果に関するアンケートを講座前後に行う。 このうち、(1)については、完全に目的を達成した。また、(2)については、DSTのテーマを中心としての講座を二カ所で行い、受講者数が少なかったが、質的研究としては十分なデータが得られた。アンケートについては、デジタル・ストーリーテリングの専門家との打ち合わせの過程で実施を見送り、それに代わって詳細な記録を取ることとした。したがって、ほぼ順調に研究は進展した。
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今後の研究の推進方策 |
平成二五年度は、(1)米国に加えて、英国におけるナラティヴ学習の理論及び実践研究の収集を行うとともに、国内におけるナラティヴ学習の事例を収集する。また、(2)実験的な開発研究として、東京及び富山において、「自分史制作」もしくは「キャリアアップ」のテーマにより、公民館やインターネット市民塾に協力を要請して、実験講座を行い、テーマの相違による学習の変化や、学習者の属性による教育効果に関するデータを収集し、(1)および(2)の調査結果から、ナラティヴ学習の教育的効果についての仮説を抽出する。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記研究の遂行のため、国内外の調査旅費として 80万円、講座の実施と運営、講師謝金として30万円×2回、その他の資料整理費や雑費として20万円を使用する予定である。
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