本研究は、ナラティヴベーストアプローチの視点に立って、1)成人教育の領域における多様なナラティヴ学習を対象として各国の事例を調査し、2)ナラティヴ学習プログラムの多様な教育効果を評価し、分析・考察を行うことを目的とした。そのため、平成24年度に、ナラティヴ学習の事例を北海道や富山を中心に行い、海外事例として、米国及び韓国の専門家を招聘したシンポジウムを行った。さらに、教育効果を質的に考察する実験的研究として、東京及び富山でデジタル・ストーリーテリングの講座を行った。 各講座では、第1回で受講者のライフストーリーを中心としたグループワークを行い、第2回ではそのライフストーリーを写真と音声で表現するデジタル・ストーリーを作成した。グループワークでは、それぞれのライフストーリーから各人にとっての新たな視点からの物語へのきっかけが生まれ、第2回のストーリーを発表した後には、講座の事前事後でそれぞれの自分への視点に変化が生まれた。この年度は、教育専門家と市民講師を対象としたため、翌年度には一般市民を対象とした効果を見ることとした。 平成25年度は、実験的開発研究に重点を置き、京都において、一般市民を対象とした講座とボランティアを対象とした講座を開設した。講座の方法と過程は前年度と同じとしたが、それぞれのテーマは、「地域」と「ボランティア活動の意義」とした。自分の人生だけではなく、自分が住んでいる地域についての語りと、自分が行ってきた活動への語りにすることによって、それぞれのテーマから自分の振り返りがいっそう容易にできることとなった。 年度最後の研究会では、両年度にわたる事業と調査結果から、ナラティヴ学習の教育効果についての討議を行い、その成果をまとめた。
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