これまで高等教育の政策研究の蓄積は少なくない。しかしそれらの研究は政府・文科省の施政方針や審議会答申の紹介・解説の色合いが濃く、政策過程論に基づいた政策形成・決定に関する研究は、きわめて少なかった。そこで本研究では、「高等教育界」を高等教育に関与する多様な「参加者」(例えば文教関連議員、文部官僚、学者、教育ジャーナリズムなど)が様々な「問題群」(カリキュラムや教科書といったミクロから制度設計などマクロに至る諸問題)の中からある選択肢をめぐって葛藤、調整、妥協を展開する政治的領域であると措定し、この問題群(重要問題としてイシュー)と参加者群(その中核に主要アクター)の両者、また各々の内部ならびに相互の関係を包括的に把握し、この界に独自の政策形成・決定のメカニズムを定量的・定性的に解明することを目的とした。 具体的には、計量テキスト分析の手法を用い、様々な政策・行政・学会における文書・データをテキスト化し、計量テキスト分析のソフトを使ってその内容分析からイシューとアクターの抽出・分析を行った。またネットワーク分析のアプローチから、高等教育関係の諸学会を中心として、その資料・データなどに現れた個人・中間団体・諸機関とそれらが関わる問題群(テーマ)の分析を行い、その関係性を解明した。さらに質的調査として、主要アクターに政策過程の実態をインタビューし、政策形成・決定に関わる権力関係の一端を明らかにした。 これらの成果の一部として、『高等教育の政策過程』(玉川大学出版部、2014年)を上梓することが出来た。
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