研究課題/領域番号 |
24653247
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
久保田 真功 富山大学, 人間発達科学部, 准教授 (00401795)
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研究分担者 |
白松 賢 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (10299331)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 万引き |
研究概要 |
本研究の目的は、少年および高齢者を対象とした質問紙調査をもとに、万引き行為を規定する要因を明らかにするとともに、効果的な万引き予防策を提案することにある。 少年の被疑者および高齢者の被疑者を対象とした調査については、愛媛県警察の協力のもと、これまで2度実施した。第1回調査は、2011年10月から2012年2月末にかけて実施した。調査対象は、被疑者の少年(20歳未満)41名、および被疑者の高齢者(65歳以上)49名である。分析を行った結果、①少年については、学校との絆が弱いこと、②高齢者については、経済的に厳しい状況に置かれていることや、社会的に孤立していること、などが万引き行為と関連している可能性が示唆された。 以上の結果を踏まえ、第2回調査を実施するにあたっては、質問項目を一部修正・追加することとした。第2回調査は、被疑者少年調査については、2012年8月から2013年2月末にかけて実施した一方で、被疑者高齢者調査については、2012年8月から2012年10月末にかけて実施した。被疑者少年調査の実施期間を長く設けたのは、被疑者少年のデータの集まり具合が不十分であったためである。 第2回調査の対象は、被疑者の少年(20歳未満)49名、および被疑者の高齢者(65歳以上)59名である。分析結果の一部は、報告書にまとめ、愛媛県警察に提出した(平成25年3月)。この報告書では、被疑者高齢者のみを対象としているものの、複数回補導された経験がある者(以下、複数回補導者)とこのたび初めて補導された者(以下、初回補導者)との比較も行っている。それにより、高齢者の万引き行為を深化させる要因が明らかになると考えたからである。分析を行った結果、複数回補導者は初回補導者と比べ、経済的に厳しい状況に置かれていること、家族との関係が希薄な傾向にあること、などが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度計画では、次の3点を目的として掲げていた。第1に、平成23年度中に実施した少年および高齢者の被疑者を対象とした質問紙調査をもとに、初犯者と再犯者との比較および少年と高齢者との比較を中心とした分析を行うことである。第2に、平成23年度中に実施した調査の結果を踏まえ、質問項目を検討した上で、あらためて少年および高齢者の被疑者を対象とした調査を実施することである。第3に、一般の少年および高齢者を対象とした調査を実施することである。 第1の目的については、「万引きに関する調査報告書(平成24年3月)」を作成したことで達成している。第2の目的については、第1回調査の結果を踏まえて、調査用紙を構成する項目を一部修正・追加した上で、第2回調査を実施したことで達成している。第3の目的については、一般の少年および高齢者を対象とした調査をすでに実施し、データ入力を始めていることで達成している。 以上のことから、平成24年度の計画は順調に進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度計画では、次の3点を目的として掲げている。第1に、万引き経験者から得られたデータに万引き未経験者から得られたデータを多変量解析法によって分析することにより、万引き行為の規定要因について検討を行うことである。第2に、万引き行為を規定する要因は、少年と高齢者とで異なることが予想されるため、少年のデータと高齢者のデータとをあわせた分析を行うとともに、それぞれのデータを個別に分析することである。第3に、以上の結果を踏まえた上で、万引き行為の理論構築を行うとともに、効果的な万引き予防策について検討することである。 以上の目的を達成する上で、一般の少年および高齢者を対象とした調査を実施することが必要不可欠である。この点については、すでに調査を実施しており、一般の高齢者に関するデータについては、すでに十分なデータを収集しているとともに、データ入力もほぼ終わっている。一般の少年に関するデータについては、複数の調査協力校を見つけ、いくつかの調査協力校のデータはすでに収集済みである。今後は、データ入力と並行して、あらたに調査を実施する予定である。 また、分析結果を踏まえた効果的な予防策については、現在、愛媛県警察と協議し、予防策の実施に協力してくれる店舗を選定しているところである。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、海外で開催される学会等に参加するなかで資料を収集するとともに、積極的に成果報告を行っていく予定である。それにあたり、海外出張費や分担研究者との打ち合わせ費、学会発表をする際の費用といった旅費が必要とされる。それ以外に要する費用としては、ファイル・ストレージ等の消耗品を購入するための費用があげられる。
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