本研究は、戦後日本における女性知識人の社会的顕在化とその拡大・変容の過程を、アメリカナイゼーションと関連づけながら社会学的な視点から明らかにすることを目的として実施した。平成24年度は、学術・総合雑誌、女性向け総合雑誌に登場する女性知識人に関する資料の収集と分析を行った。そこから、戦前期から継続して活躍した女性知識人(戦前派女性文化人)と、戦後になって活躍しはじめた女性知識人(戦後派女性文化人)とでは、教育歴、活動領域、メディアなどに違いがあること、特に戦後においては「アメリカ帰り」の女性知識人・文化人の活躍が目立つようになったことを明らかにした。平成25年度は、主として外国留学経験のある女性知識人・文化人に焦点をあてて、そのライフコースやメディアでの活動について分析を行った。なかでも、30年以上のアメリカ生活を経て、戦後日本の論壇メディアで幅広く活躍した石垣綾子に注目し、著書、雑誌記事、テレビ出演などの資料の収集に着手した。平成26年度は、石垣綾子のライフヒストリーや執筆・講演活動全般について、さらに資料の収集と分析を進めた。石垣記念館に所蔵されていた資料の整理と分析を行うと同時に、アメリカ時代の動向について現地で資料調査・収集を行った。 以上の研究経過のなかで、戦後日本における女性知識人・文化人の出現の意味を考察し、現在にいたるメディア文化人の先駆け的な存在であったことを明らかにした。 これらの研究成果については、報告書、共著論文の他、石垣記念館における講演等の形で公表した。今後、全体の成果をまとめて公表する予定である。
|