研究課題/領域番号 |
24653252
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研究機関 | 山口県立大学 |
研究代表者 |
M・S Higgins 山口県立大学, 国際文化学部, 教授 (40264981)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 自己肯定感 / draw-and-writeインタビュー / 子供の自己肯定感 |
研究概要 |
平成24年度の研究計画にそって、春期は教材を準備し翻訳した。主任研究員とともに絵と文字で表現させる「draw-and-writeインタビュー」をおこなう調査助手一名を養成した。夏期には、児童への指導において、わかりやすい言葉遣いと、最良のタイミングを確認するために、インタビューを小グループの児童に試行した。それにより一時間に最大10人までの児童へのインタビューが可能であることが明かになった。秋以降、山陽小野田市の4校からプロジェクト参加の申し出があった。5,6年の在籍児童数にそって、児童および両親への600件のDAP(内的外的資産発育プロフィール)アンケートを準備した。大学の研究倫理規程により、事前に、生徒とその両親からのインフォームドコンセントを得る段階に時間をかけた。 約100通の調査結果が返送されたのでこれらの児童全員への「draw-and-writeインタビュー」をおこなった。学校のスケジュールの都合で、我々は各校1時間半という制限内でインタビューを遂行した。規模の大きな学校での最大40人の児童に対応するために、新たに3人のアシスタントに「draw-and-writeインタビュー」の実施ができるよう訓練した。最終的に描画とアンケートの両方を完了した児童の総数は88名であった。 データ入力後、初期の分析を始め、日本全国を対象とする既存の調査結果と比較した。描画の最初のコード化を行ない、それに基づいていくつかの予備仮説が生まれた。主任研究員は3月にミネソタ州ミネアポリス市にDAP調査の創始者を訪ね、量的・質的データの分析手法についての討論を実施した。この短期訪問は、今後の協働と研究の方向性について実り多きものとなった。現在、描画のより深いコード化を継続しているが、次なる調査研究へ進む前に、親と子供たちのアンケートの更なる分析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査研究計画遂行上、いくつかの困難に直面し各々に応じ、修正した。 1)返送を期待した数百のうち、資質スケールの低い方と高い方の両端100人に基づき、原案を選択決定した。過去の調査研究プロジェクトでは、両親と児童に対し、内容の基本説明と、参加者は自発意思であり、調査に協力を求めた内容の簡単な文書を添えて返送を依頼してきており、調査回答が返送された時点で「許諾」は成立しており、学術的プロジェクトの一部として扱えるとみなし、この考え方で90%の返送率を得ていた。しかし、現在は、大学の「生命倫理委員会」の要請に添って、我々は、両親と児童にアンケートに添え、更に4ページに及ぶ「法律」用語で被調査者の権利を説明し署名で許可を得る文書発行作業を余儀なくされている。これら混み入った手続きが多くの両親をプロジェクトへの参加辞退に導いたと考える。 回答率が20%(5件に1件)と少数だったため答えてくれた児童ほぼ全員と面接し、結局、完全なデータは88のみであった。しかし、興味深いことに数年前の全国データと比較して、すべてのカテゴリーで、発達的資質に関して全般的により高い平均を示した。山陽小野田市が、比較的子育てに適しているからと考えることもできるが、法・倫理的文書を読んで理解し、自ら選んで全ての調査への応えを完了した人々のお陰で得点がより高かったとも言える。 2)厳しい時間制約の限界にも直面した。draw-and-write 面接はどの学校でも1時間半のみ与えられ、つまり、1学校40人の児童との面接実施のために3人のアシスタントを即席に養成せざるを得なかった。彼らの経験不足故にデータの幾つかは初めに期待していたほど完全には集まらなかった。それでも集まったデータは有益であり、draw-and-write アプローチの有効性は保持されていると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、両親と子供達のアンケートの統計比較を完了する予定である。DAP調査に加えた「自己効力感」に関連した質問項目の有効性を決定するための統計分析と比較を踏まえて、質問票の手直しも予定している。 次に、教員になることをめざす学生たちを訓練して小規模の反復研究を行い、生データのコード化におけるばらつきを防ぐ基準を確定する。 イギリス(出来れば第三世界の国のものも)の研究協力者によって集められた類似データとの比較のため協働する。研究調査結果に対するより多くの洞察を得るためにデータから得られる我々の仮説と質問を共有し、論議するために親と先生のフォーカスグループを編成する。それらのグループはすべての参加者の両親に関わるというわけでなく、興味を示した小中規模のグループのボランティアと関わると考えられる。主任調査員は調査研究の比較文化的な見地からの観察と論議のためにイギリス現地を訪れる。入力結果に基づいて、質的・量的両側面について、質問項目と言葉の選び方等の改訂をおこない、カテゴリーそのものをも見直す予定である。グローバル化時代の異文化間比較研究の手法を確立したG. Hofstedeの研究方法にもとづいて、彼らの反応を比較するフォーカスグループに質問を組み入れる。 今後の研究での発育資産測定に質的・量的ツールを活用したい研究者のために、我々の分析結果を報告し、訓練マニュアルを発展させていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年の予算執行について: 予算は計画通りに執行する。約30,000円は教材、文具そして調査と報告の印刷に充てる。教材の追加費用が生じた場合、主任研究員の属する大学の調査研究費で充当する。関連学校への旅費、イギリスへの視察と協働の訪問(調査旅行を一度必要とする)は320,000円を見積もっている。残り150,000円は調査研究補助人件費、データの入力と分析、翻訳などである。
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