研究概要 |
本研究は,子どもとともにする絵本作りを通じて教師(保育者)を目指す学生(以下学生と示す)に,絵本の楽しさやメッセージ性に気づかせ,学生の内面性の成長を助けることを主眼とした。絵本作りを通して,学生は子どもたちが何を思い,楽しみ,学ぶかを考え,自分が子どもたちに伝えたいことを思いめぐらすのではないかと予測した。このような活動によって,学生の人間性が育ち,子どもたちへの思いやりが深まるであろうし,絵本作りによって,どのように学生の内面の育ちが促されるかについて,実証的に検証した。また,絵本作りを自分の経験の振り返りと統合の過程としてとらえ,内容を分析するとともに素材がどのように活用されたかを検討した。子どもたちの絵本に表現された内容や素材を読み取り,整理することによって,絵本作品の内容分析を行い,さらに文献をもとに考察を加えた。 さらに,養育者が子どもの絵本作りにどのように関れば,子どもの成長に役立つのかを考察した。幼児の絵本作りは,数ページにわたる内容の構成をしなければならないという困難さがある一方で,自分の絵本を作るという大きな魅力がある。また,自分の好きなテーマを選び,一生懸命打ち込むため絵本の中に幼児の人間性が現れてくる。幼児の作った絵本を,図鑑的内容と空想した物語を描いた内容,思い出アルバム風の内容という3つの内容に分類した。図鑑系の絵本では,好きな対象を探求する活動となる。物語系の絵本では,今までにない空想の世界を生み出すという活動となる。思い出系の絵本は,過去の経験を振り返るという活動が見られる。いずれも自己を明確に表す活動であり,その個性に合わせた援助の仕方が幼児の成長にとって大切であると考えられた。その結果,絵本作りが人格形成にも大きな影響を与えることをつかんだ。学生と子どもとの絵本作りの経験による意識の変化から,保育者養成の絵本作りの意義を明らかにした。
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