研究課題/領域番号 |
24653256
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研究機関 | プール学院大学 |
研究代表者 |
中島 智子 プール学院大学, 国際文化学部, 教授 (80227793)
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研究分担者 |
金 侖貞 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 准教授 (40464557)
広瀬 義徳 関西大学, 文学部, 准教授 (90352822)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 公立学校 / 外国籍教員 / 採用自治体調査 / 教員インタビュー / 多文化教育 / 教員の世界 |
研究概要 |
5月6日に研究組織を立ち上げ、計11人のメンバーによる調査と年間5回の研究会及び講師を招いての学習会を開催して調査研究を進めた。 まず、先行研究の収集整理と公立学校における外国籍教員に関する戦後の日本政府/教育行政側の見解と運動側の要望等の流れを整理し、全員で共有することを図った。そして、全国自治体郵送調査班と外国籍(もしくはルーツのある)教員への聞き取り調査班に分かれ、それぞれの調査計画を確定して調査を実施した。都道府県政令指定都市教育委員会を対象とした郵送調査は、10月に実施し結果を分析した。その結果、全国に外国籍教員が250人いることが判明した。その内訳も含めて実態把握できたことは、91%という高い回収率とともに画期的なことだといえる。この回答を踏まえて、大阪府・大阪市・京都市・川崎市・北海道の各教育委員会に訪問調査を実施し、外国籍教員の採用や実態についてのより詳細な聞き取りを行った。 また、外国籍教員の位置づけについての教育政策の裏づけとして、国会での議論等の第1次資料の収集も行った。田中宏氏を講師に呼んで学習会も行った。教員インタビューについては、まず該当する教員を特定する作業を進めながら、関東班と関西班に分かれて聞き取り調査を行った。その結果、40人の聞き取りを行うことができた。関西班23人、関東班12人、それに周辺インタビューとして日本人教員4人とアイヌ出身教員1人である。生い立ち、教員志望動機、採用試験受験状況、採用後の手続き対応等、教育活動、外国籍教員の身分に対する認識等を聞き取り、録音したデータはすべて文字化して共有できるようにした。対象者の世代、国籍、校種などは多様となるよう配慮した。このように量的にも質的にも広範な対象への聞き取り調査が実施されたことはなく、収集したデータは貴重な成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
まず、全国自治体郵送調査については、当初計画通り実施できただけでなく、回収率が91%と、予想以上の結果となった。また、当初計画では想定していなかったが、5教委に対して訪問調査を実施した。というのも、郵送調査では回答への協力を得て回収率を上げるためにはあまり詳細な内容の調査票を作成することはできなかったが、外国籍教員の身分や書類上の手続き等が相当煩雑な内容を含んでいるため、訪問して担当者に直接聞き取る方法がぜひとも必要だと判断されたからである。その結果、外国籍教員という立場をめ ぐる複雑な状況の実際を知ることができ、理解を深めるとともに教員への聞き取りにおいても有益な情報となった。 次に、当該教員への聞き取り調査は、初年度はインタビュー対象者を特定する作業に時間がかかると思われたため、パイロット的に関西を中心に15人程度と想定していたが、共同研究するメンバーの精力的な調査や調査協力者からの紹介等があって、当初予定の2.5倍の聞き取りを行うことができたのみならず、関東地域での聞き取り調査が予想外に順調に進んだ。また、外国籍ではないが教員のエスニシティの多様性という観点から貴重な証言となるアイヌ出身教員への聞き取りをできたことも、当初計画にはなかったが貴重な機会であった。また、外国籍教員数の過去の数字の特定や、教育政策の裏づけとしての国会での議論等の第1次資料の収集は当初予定にはなかったが、精力的に進めるメンバーの協力があって可能となった。 以上、研究は順調に進めることができただけでなく、当初の計画以上に進展した。ただし、次年度のための予備調査として外国籍教員の勤務する学校の管理職への聞き取りを行う予定だったが、当事者インタビューに手を取られて動けるメンバーがいず、その点のみ反省が残る。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は最終年度であり、次のように進める予定である。 1.昨年度の聞き取り調査の整理をして対象者の偏りを補正するための調査計画を立てて、外国籍(ルーツのある)教員20人程度の聞き取りを行う。その際、関西及び関東圏以外の地域を含めるよう考慮する。2.昨年度の聞き取り対象者の中から5人を選抜し、その教員のかつての、または現在の勤務校の管理職と同僚教員への聞き取り調査を実施する。3.昨年の郵送調査の回答のあった教委のうち、回答内容によってさらなる訪問調査が必要だと判断される教委への訪問調査を行う。4.2014年2月か3月に、公立学校における外国籍教員に関するシンポジウムを実施する。これは、我々の調査で知り得た内容を広く還元してともに協議するためと、各地で孤立しがちな外国籍教員が集える場を提供するためである。5.本研究の成果を論文等にまとめ報告書を作成し、関係機関や関係者に送付する。なお、その報告書をもとに出版計画を立てる。 なお、今年度はこれまでの研究成果をまとめて学会等で発表し、広く意見を聴取してさらなる研究に反映させていく予定である。現在決まっているのは、異文化間教育学会第34回大会のケースパネルでの発表(6月9日於;日本大学)であるが、他に日本教育社会学会と教育行政学会が予定されている。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じたのは、関東方面の教育委員会への訪問調査を予定していたが、先方の都合により実施できなかったためである。したがって、これについては次年度に実施する予定である。 次年度の研究費使用計画は、関東地域の外国籍教員及び周辺教員への聞き取りのための旅費や謝礼と、関西での定例研究会への出張旅費として25万円を担当の研究分担者に配分している。また、昨年度におこなった郵送調査の回答にもとづき詳細について聞き取るための訪問調査費用として、担当の研究分担者に10万円を配分している。関西地域の研究協力者を中心におこなう外国籍教員及び周辺教員への聞き取りのための旅費と謝礼として25万、最終年度であるために最後にまとめる報告書の印刷製本費として20万円、研究成果を広く社会に還元するためのシンポジウムの開催費用として10万円、学会発表のための旅費として8万円、その他消耗費等として2万円を予定している。
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