本研究は、中学校陸上競技短距離走の授業の内容としてこれまでに効果が明らかにされているウォーキングと、体育授業においてその効果が検討されていないスキッピングを授業に取り入れることによって、スタート時における加速力がどのように変化するか、また疾走動作がどのように変化し、疾走能力が向上するかについて総合的に検討することを目的とした。 2年生男子を対象に8時間1単元の陸上競技の授業を実施した。第1時間目にプレテストとして50m走を行わせ、記録測定と動作撮影をした。第2時間目から第7時間目では、S群は授業の内容としてスキッピングを、SW群はスキッピング及びウォーキング両方を取り入れ毎時間10分程度の走の技術指導を行った。そして第8時間目にプレテストと同様な条件でポストテストとして50m走の試技を行わせ、記録測定と動作撮影をした。その結果、以下のような知見が得られた。 W群は、50m走記録が有意に短縮し、上下動の少ない滑らかな、かつ地面を強く押せる疾走動作に変容した。一方SW群においては、50m走記録が有意に短縮し、合理的な疾走動作に改善された。また、0m~10m区間において、区間タイム及び平均疾走速度に有意な差が認められた。これらのことから、SW群はウォーキング学習とスキッピング学習の双方の効果が得られたものと推察される。 以上のことから、中学校短距離走授業において、ウォーキング及びスキッピングを単独で学習する授業形式より、同時に取り入れて学習する授業形式のほうが、生徒の疾走能力を効果的に向上させるために有効であることが示唆された。
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