研究課題/領域番号 |
24653265
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
小川 雅子 山形大学, 教育文化学部, 教授 (40194451)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 各教科の教育(国語) |
研究概要 |
現行学習指導要領小学校(国語)に、戦後初めて、「神話」が教科内容として位置づけられた。しかし、日本の神話は戦後まったく教育の外に置かれていたので、国語科における神話教材の意義や開発についての研究は行われてこなかった。教科書にも、「いなばのしろうさぎ」の一部分の要約や絵本が載せられているだけである。そこで、本研究では、国語科における神話の今日的意義を踏まえた新たな解釈を提示して、神話教材の開発をすることが目的である。 戦前及び戦中の神話解釈から脱却するために、西郷信綱の「神話は独自な比喩表現であるからその意味は曖昧多義であり、一義化することが難しい。一義化できれば、それはもう神話でないとさせいえなくもないような本質を神話はもっている。」という指摘により、まず、現代に生きる神話という文化的教育的観点から、新たな解釈の立場を明確にして、一貫した解釈をまとめた。 古事記神話に関する主な研究書によって、従来の解釈や説の分かれる部分について考察し、本研究の独自な立場を明らかにした。さらに、絵本・児童書を多く集めて目を通し、共通の傾向や問題点を整理して、本研究で作成する教材の特徴を明らかにした。視覚的要素を取り入れた教材化のために、古代の服装や生活道具についても調べた。それをもとにして、古事記「冒頭の天地創造(別天神)・二神国生み・黄泉の国」までの内容を、紙芝居の形で教材化した。紙芝居は、従来の形式にとらわれず、国語科の教材となり得るように、文字も入れながら独自のものを作成した。文章は、対象学年に応じて3種類を用意した。 この紙芝居を、大学生・大学院生・現職教員を対象に実践したところ、神話を知らない対象者から、現代に生きる文化的教育的観点からの解釈に驚きと共感が得られた。現職教員からは、児童・生徒を対象にした時の実践についての助言を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の計画は、「①神話教材の調査と問題点の指摘」、「②神話の絵本や児童書を集めて検討すること」、「③絵を描くための資料として古代の衣装や生活道具について調べること」、「④内容のまとまりを考えて、教材を試作すること」、「⑤指導者用のテキストを作ること」である。 ①については、現行教材の乏しさに対して、教育理念を明確にした上で、本研究の独自な神話教材開発の立場を明確にした。『古事記ものがたり』の冊子の編著を通して、具体的に明確にした。②については、多数の図書に目を通して、共通した傾向や問題点を整理してまとめ、本研究の独自性を明確にし、差異性を明らかにした。③については、文献資料だけではなく資料館等の資料に触れながら調べた。 ④については、これまで教材化されていない古事記冒頭からの話を、国語科教材として独自の工夫を入れた紙芝居として完成させた。これを、大学生や現職教員を相手に、複数回実践して反応を確かめながら、児童・生徒への教材として活用の方法を検討した。 ⑤については、現職の教員でも神話の内容を知らない教員が多い現実がわかったので、誰でも実践できる指導者用のテキストの細部の構想を練っている段階である。 以上のように、本研究は、順調に確実に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度に作成した紙芝居教材を使って、小学校・中学校・高等学校で授業を行い、神話の開発教材が児童・生徒にどのように受容されたかについてアンケート調査を行う。アンケートの実施・分析・考察によって、神話教材の成果と次の教材作成の課題を明らかにする。 神話をよく知らない大学生や現職教員を対象に、継続的に古事記神話を読む活動を行う。その反応をもとにして、誰でも紙芝居教材を使った実践ができる指導者用のテキストを作成する。 児童・生徒の具体的な疑問や感想を生かし、神話の内容の展開に即して、二つ目の教材を作成する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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