研究課題/領域番号 |
24653266
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
清水 美憲 筑波大学, 人間系, 教授 (90226259)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 授業 / 国際比較 / 数学 / 教授・学習過程 / 教授学 |
研究概要 |
本研究の目的は,数学科授業における教授・学習行動の特徴を,授業で観察される教授・学習行動を記述するために用いられる用語に着目して明らかにすることである。すなわち,各国・地域の文化的・社会的背景の下で,教師や研究者が用いている用語に着目し,数学科授業で観察される教授・学習行動を記述するために用いられる用語と,その用語によって記述される行動についての特質とその差異を比較文化的に研究することである。 研究の第1年次の本年度は,本研究課題に先行する研究課題において取り組んできた国際共同研究プロジェクトLPS(Learner's Perspective Study)によって収録された授業データ(英文)を和訳し,分析資料を整理するとともに,一部のデータについて分析した。具体的には,教授学的記述用語の比較のために地域の多様性を考慮し,日本,ドイツ,オーストラリア,スウェーデン,チェコ共和国,香港の授業データについて整理し,分析を進めた。その一方で,海外の協同研究者による同一データの分析結果を,教授学的記述用語の観点から検討した。 その結果,各国の数学科授業を特徴付ける記述用語について,日本において用いられる教授学的用語には対応しない異なる記述用語の存在が示唆された。また,日本の授業の終末段階でしばしばみられる「まとめ」のような同一の授業事象に対する意味付けについて,異なる文化の下で活動する研究者間で異なる機能を想定した異種の用語として用いられている可能性が指摘された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先行する研究課題で収録した授業データから分析するべき授業データを選択し,その記録の翻訳,整理を進め,一部のデータについては分析を行っている。その作業によって,各国の数学科授業を特徴付ける記述用語について,授業事象を記述・表現するために用いられる用語の一部(「まとめ」,「机間指導」等)について,日本において用いられる教授学的用語には対応しない異なる記述言語の存在,同一の表現に対する異なる意味付与が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の分析をさらに進め,授業事象を記述する用語についての分類整理を行い,「用語集」を作成する。この用語集を,授業過程と対応させ,用語集による授業の過程の再構成を試みる。さらに,日本の授業データ(LPSデータ)について海外共同研究者に分析を依頼し,彼らに教授学的記述用語と「用語集」を提供して,彼らの視点からの分析結果を得る。この一連の作業を通して,わが国の教師や研究者が共有していて通常は顕在化しない教授学的な概念と,授業についての考え方(「授業論」)を解明するとともに,その意義を考察する。 また,分析された指導経験豊富な授業者の授業の特徴,開発する「用語集」を用いて,数学科教員養成プログラムにおける「モデル授業」を開発する。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度の分析・考察をさらに進める(物品費,データ整理・処理謝金)。 研究成果については,下記の2つの国際会議に参加して,研究発表と海外共同研究者との研究打ち合わせを行う(海外旅費)。なお,前者については,投稿結果の査読待ちの状態であり,後者についてはすでに研究発表が受理されている。 ・第37回数学教育心理学国際会議(PME37, キール(ドイツ),7月) ・第15回欧州教授学習国際会議(EARLI15,ミュンヘン(ドイツ),8月) また,日本科学教育学会年会第37回年会と日本数学教育学会第46回論文発表会に参加し,本研究課題の研究方法論と分析結果についての研究発表を行う(国内旅費)。
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