研究課題/領域番号 |
24653269
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
中村 光一 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (80225218)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 教師教育 / 算数科・数学科 / 授業研究 |
研究概要 |
教育実習生の数学の一斉授業文化の形成を明らかにするために,2つの課題を設定した。ひとつは授業研究の文化であり,他のひとつは問題解決型授業の文化を質的データを用いて明らかにすることである。そのために,初年度はパイロットデータの収集と分析のための新しい概念について検討し,本データ収集の準備をすることが目的であった。 パイロットデータとして,事前・事後指導のビデオ録画,文書データの収集を行った。特に,実習生の事前指導での授業参観と協議会のビデオ録画と実習後の授業参観と協議会のビデオ録画を収集し,分析のために発話記録を作成するなどデータの整理を実施した。そして,これらのデータの分析を進めてきた。データ分析のために,「授業のリアリティ」という概念を新しく導入した。 (1)分析のための概念の導入 協議会のビデオ録画を分析するために,「授業のリアリティ」という概念を新しく導入した。個々の教師または実習生が授業をどのように捉えているかを記述するための概念である。基本的に,教師や実習生が授業について語る機会を捉えて,彼らがもっている授業についての考えを捉えることが可能である。 (2)協議会の分析 「授業のリアリティ」という概念を用いて,事前指導における実習生のもっている文化と実習後に実習生のもっている文化を捉える試みをした。結果として,教育実習生は,実習前には授業において生じている事実を捉えることができず,教師の指導法に焦点をあてた授業のリアリティをもっていた。実習後には,教育実習生は,教材とかかわりながら,授業の事実をもとにした授業のリアリティをもっていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題である教育実習生の授業研究の文化,問題解決型授業の文化の形成にかかわって,初年度は,本データをとるための可能性を探ることが初年度の重要な課題であった。 まず,変化を捉えるための分析のための概念として「授業のリアリティ」という概念を新しく導入したこと,そしてその概念を用いて教育実習生の授業研究文化に関しての変化が捉えられた。言い換えると,「授業のリアリティ」という概念が今後のデータ収集と分析の方針を決定するために有用であることが期待できることである。 初年度に収集したデータから,教育実習生が,実習後に目の前で実施されている授業を具体的にとらえ,それを議論する対象として扱えるようになったことがわかった。これは授業研究文化を考えるとき,授業研究を考えるときのもっとも基本的な見方を教育実習生が構成したと考える。次年度の本データの収集を考えるうえで,貴重な結果が得られた考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2013年度は本データの収集がひとつの課題である。他の課題として,分析のための概念の開発がある。 (1)本データの収集 本データの収集では,教育実習生の教育実習期間での変化の様子を捉えることを課題とする。そのために,実習前,実習の後の教育実習生の実態を捉えるためのデータ収集と実習期間中の継続的なデータの収集をすることとなる。実習前,後では,実習生への調査紙によるデータ収集を行う。特に,問題解決型授業文化を分析するための質問紙を実施する。そして,実習期間中には,実習生が実施した授業の録画,その協議会の録画,他の実習生が実施した授業の録画,その協議会の録画,授業前の教師から実習生への指導場面,授業後の教師から実習生への指導場面の録画というように,実習生の教育自習で鍵となる場面のデータ収集を実施する。また同時に,実習生へのインタビュー調査も実施する。 (2)分析概念の開発 既に「授業のリアリティ」という概念を導入したが,問題解決型授業の文化を分析するために,新たな分析概念を導入することを課題とする。この新しい概念を用いて(1)で収集したデータを分析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
2012年度のデータ収集にあたって,文書データの収集が多くなされた。2013年度は,前年度のデータ収集の結果,ビデオデータの収集の必要性が増大し,データの文書化に予算が必要となる。
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