本研究は、「プログラミングは、仕事の進め方をコンピュータに教える活動である」とみなし、「自分より知識レベルが下の者に対して、仕事の進め方を教える経験」を、プログラミングを学習し始める前に十分トレーニングしておく必要があるという仮説のもと、母語による事前トレーニング教材を設計・開発しようとするものである。 平成24、25年度には、教員側視点に立ち、学生が記述した説明文の何に着目してどのように評価すればよいか、換言すれば、学生に何を意識させてトレーニングを行えば成果をあげられそうかに関して知見を得た(この成果は平成25年度教育システム情報学会誌に発表)。これに基づいて90分3回の事前トレーニング・カリキュラムと教材を構成し、実験群約50名に対して実施した。トレーニングにおいて、なぜ記述不備なのかがわかるように学生へフィードバックをすることと、その後の修正がどのようになされたか、記述の変化についてデータを集めた。このデータを分析した結果、学生自身で気づき易い記述不備と、学生自身の力だけでは気づきにくい記述不備のパターンが見えてきた。 平成26年度は、学生のプログラミング作業中の行動データ(前年度授業において取得した)について、記述不備パターンとの関係を分析した。約3ヶ月間試行錯誤しながら分析を進めたが、行動データの単純な分析では目立った特徴を見出すことができず、分析にはある種の文脈が必要らしいと判断し、膨大な行動データを可視化する必要性を認識するに至った。そこで、学生のプログラムテキスト編集行動を可視化するツールを作成することにした(この成果は平成26年度情報学ワークショップで発表)。ツールによって、学生が編集作業時に何を考えていたのか推測し易くなることを確認し、今後のデータ分析の手がかりとできることを確認した。
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