本研究の目的は、「日本の伝統文化である自然の事物・現象を表す表現に注目し、和文化融合型理科カリキュラムのモデル開発を行う」ことである。初年度の主な取り組みとしては、自然の事物・現象を表す言葉に関連する図書を収集するとともに、それらから得られた知見を参考に理科授業での扱い等についての意識調査を計画し、教員と児童に対して実施した。その結果、教員は、言語活動が豊かになるととらえるとともに日常生活を結び付けやすくなる、日本の自然の特徴が取り入れやすくなる、子どもの興味関心を高めたり、知識理解を豊かにしたりするなどととらえていたことが明らかになった。また、観天望気や季節のようすなどを扱うことに肯定的であった。児童も「自然を表すことば」を学ぶことに概ね肯定的であり、男子より女子の方が比較的積極的であった。また興味関心の対象については、男女で異なる点が見られた。試行的な実践も一部行われ、2年次研究の準備とした。 2年次(本年度)では、前年度の成果を踏まえ、授業化をめざした研究チームを編成し、試行単元の実施に取り組んだ。「自然とともに生きる(第6学年)」や「月と太陽(第6学年)」「ヒトや動物の体のしくみとはたらき(第6学年)」、「雲診断をしよう(第5学年)」「1年の気温の変化(第4学年)」「いろいろな昆虫の観察(第3学年)」等において実施され、言葉集めや命名活動、短歌・俳句づくりとともにポスター発表やクイズ形式の発表、冊子にまとめるなどの工夫が見られた。各実践者の省察をもとに指導のポイントが示されるとともに1つの試行実践(第4学年)に対する他の実践経験者によるコメント等も集め、実践化に向かう指導上のポイントとして整理がなされた。
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