研究課題/領域番号 |
24653275
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 兵庫教育大学 |
研究代表者 |
山中 一英 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (50304142)
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研究分担者 |
新井 肇 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (60432580)
谷田 増幸 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (40442503)
天根 哲治 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (70127603)
黒岩 督 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (80153394)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 新人教員養成 / メンタリング / コーチング / 国際情報交換(英国) |
研究概要 |
新任教員の大量採用が進む現状のなかで,各々の職場において新人教員の力量形成をどのように推し進めていくかは,喫緊の課題である。そうであるにもかかわらず,日々,新人教員と経験豊富な教員の間で実際に行われている相互作用の詳細は明らかでない。そこで,平成24年度においては,初任者と初任者研修指導教員(以下,指導教員と略記)に焦点をあて,両者の相互作用の実際を分析的に把握し,そこから今後の研究の展開に向けた視点や論点を抽出することにした。なお,これは,平成25年度以降に実施予定の「フィールドワーク」の試行的な取組として位置づけられるものである。 指導教員が初任者に継続的にかけていた言葉に注目したところ,次の3つの視点を導出することができた。第1に,「上下関係のなかで模索される水平関係」であり,職位,経験,知識の豊かさなどの点で明確に上下関係が存在するなかで,指導教員は初任者の独り立ちを促す働きかけを行おうとしていた。第2に,「実践の過程における『省察(reflection)』を基礎にした相互作用の展開」であり,指導教員は初任者自身で望ましい実践のあり方を見つけていくよう促す一方で,初任者も指導教員から提示された実践方策を唯一の正解とみなさず,自らの省察を基礎に実践を構築していこうとしていた。第3に,「指導教員と初任者の相互作用を通して構成される『反省的実践家モデル』」である。(上記のような)省察を基礎にした相互作用は,指導教員が主導しているように見えるし,実際に,その可能性は高いと思われる。しかし,指導教員の語りは初任者の省察的な語りによって引き出されたものであるともいえ,そうであるなら,指導教員の「反省的実践家」としての姿も「優れた教員養成者」としての姿も,初任者との相互作用を通して現れたもの(社会的に構成されたもの)であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
英国(イングランド)で導入された現職(新人)教員教育制度にMTL(Masters in Teaching and Learning)があるが,MTLを支える枠組みは本研究が理論的基盤とするものと近似しており,それゆえ,MTLが直面した課題は本研究の課題であるともいえる。そこで,平成24年度に,ロンドンの教員に対してMTLを提供するロンドン大学教育研究所(IOE)を訪問し,MTLにかかわる教員へのインタビュー調査を行い,本研究の問いを含む現職(新人)教員教育にかかわる広範な論点について議論を行いながら,MTLと本研究(さらには,MTLと教職大学院)の双方に共通する課題と改善点を明らかにすることを計画していた。ところが,ロンドン大学に在籍する本研究の研究協力者に不可避的な事情が生じたために,平成24年度中に実施することができなくなった。このようなことから,現在までの達成度を「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は実証的研究と理論的研究から構成され,実証的研究はさらに4つの方法によって遂行される。そのうち,インタビュー調査(海外)に関しては,平成24年度に実施することができず,当初の予定を変更せざるを得なくなったが,これ以外の,学校現場における先輩教員と新人教員の相互作用過程の分析である「フィールドワーク」,「優れた教員養成者」に求められる要素を測定するための質問紙開発である「アンケート調査」については,交付申請書に示した通りに実施する予定である。なお,各取組は同時並行的に進められるため,取組ごとに主担当者を決め,定期的に会合することで,相互に進捗状況を確認し合いながら,実行していけるようにしている。
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次年度の研究費の使用計画 |
ロンドン大学教育研究所(IOE)など海外の研究機関等において種々のインタビュー調査を行うための調査旅費(当初から平成25年度に実施予定として計上していた分に平成24年度からの繰越分を加えた旅費)ならびにそれに伴う研究協力者謝金,国内のフィールドワーク調査旅費,アンケート調査費用等として研究費を使用する計画である。なお,これらのうち,海外調査旅費については平成24年度分からの繰越分を含んでいるが,それ以外については概ね当初の研究計画にしたがった使用を予定している。
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