研究課題/領域番号 |
24653276
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
桑原 敏典 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (70294395)
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キーワード | 教科教育学 |
研究概要 |
本研究は、小・中学校の社会科授業として実践可能な政治的リテラシー育成プログラムを開発しようとするものである。プログラム開発に当たっては、複数性を手掛かりとして、多様な価値観や理想の追求を保障しうる学習を提案することを目指していく。以上の目標を達成するために、具体的には、複数性を前提とした政治的リテラシーの体系化、それに基づくカリキュラム・フレームワークの構築、そして、小中学校において実践可能な政治教育プログラムの開発を行う。 平成25年度は、前年度の研究成果に基づいて中学校社会科の単元開発を行い、中学校において実践しその効果を検証した。開発単元は、日本の外交政策を取り扱ったもので、近年問題になっている近隣諸国との領土問題を教材として取り上げた。具体的には、中国との間で問題となっている尖閣諸島問題をテーマにして、問題の解決に向けてどのような外交政策が考えられるかを検討させ、よりよい政策を選択させるように授業を構成した。この授業の過程における生徒の意思決定の変化を分析することによって、開発単元の効果と課題を明らかにした。外交問題を取り上げたのは、問題の解決に関しては様々な価値観が錯綜し、立場によってどの価値を重視するかということが異なることを認識できるからである。生徒は、この授業の中で、重視する価値観によって異なる政策を比較検討することによって、事象に対する多様な見方考え方を身につけることができると同時に、同じ問題の解決に関しても、立場によって重視する価値観が異なることやどの立場を選択するかということは個人の判断に委ねられていることを確認することができるようになっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
提案する原理に基づいた単元を開発しただけではなく、それを複数の学校で実施することができ、その効果を検証するプロセスにまで達することができた。そのため、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は最終年度となるため、昨年度開発実践した単元の効果の検証を引き続き行うとともに、その成果をふまえながら、カリキュラム・フレームワークを構築するとともに、小学校及び中学校の単元開発を引き続き行っていく予定である。また、それらの開発単元をできる限り実践し、その効果を検証するためのデータの収集に努めたい。 以上の成果については、国内の学会にて報告するとともに、海外の学会においても報告を行い、政治教育研究に関わっている研究者と広く意見交換を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度に収集した資料等で単元開発を行うことができたことと、出張を伴う調査を次年度に行った方が研究遂行上適切と判断したため。 今年度は、成果報告を海外にて二回以上行うため、その費用として80万円程度の支出が見込まれる。また、資料収集のため30万円程度の支出を見込んでいる。また、国内調査のための旅費として40万円程度支出する予定である。残り10万は謝金として支出する。
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