研究課題/領域番号 |
24653279
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
風間 喜美江 香川大学, 教育学部, 教授 (00552374)
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研究分担者 |
橋本 是浩 大阪教育大学, 教育学部, 名誉教授 (00030479)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 図形命題 / 図の変数性 / 図の定数性 / 証明活動 / 図の役割 |
研究概要 |
本研究は,図形の証明することの意味やその理解についての指導研究,および,そのための教材開発を2つの視点:「図の変数性」と「図の定数性」(文字の役割と対比させた視点)から行うこと,にある。図形の証明において,ひとつの図形に対して同じ条件を保ちつつ図は無数にあり,生徒は学習の中でこのことを理解しなければならい。このことから,文字機能の定数性と変数性と同じように,図の働きにも,文字における変数や定数と同じ意味が込められている「図の変数性」,「図の定数性」があると考えられる。この研究視点から,次の5点について研究計画を立てた。 ①文献研究と考察 ②図の変数性・定数性に関する実態調査問題の作成と実施・分析 ③教材開発 ④指導実践 ⑤教材開発の妥当性とまとめ 平成24年度は,上記①②を中心に実施した。また,それと並行しながら③も実施した。①の文献は極めて少なかった。②の調査問題作成はこれまでにない発想で工夫を凝らした。調査実施対象は,中2の学習を修了した「中3の生徒」と「大学生」である。その結果, ・命題に添えられている図に引きずられて証明を考える傾向にあること ・命題の仮定の意味が思考できないこと ・図に依存した証明が他の図に適用できる証明かどうかの判断がつかないこと 等の中学生,大学生とも同じような実態が明らかになった。命題に添えられた図の役割を意識し,命題の証明には「図の変数性」「図の定数性」を意識させることが,証明の理解に必要であることが明確になった。指導において,その図を視点とした活動を証明活動とし,教師と生徒が創る授業の目標としていく必要であることに至った。この成果から,次年度は③④を中心に研究を進め,図形授業改善のために,証明活動についての提案をしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「9.研究実績の概要」に示した通り,研究目的に対し,研究計画①~⑤を立てた。平成24年度の計画は, ①文献研究と考察 ②図の変数性・定数性に関する実態調査問題の作成と実施・分析 ③教材開発 であった。この計画の実施は,内容が示す通り中学生,大学生の図形の図についての認識が明らかになり,今年度の目標は充分に達成された。成果は次の研究発表会で発表した。 ア「図形命題の仮定を思考する証明活動」日本数学教育学会論文発表会,2013年11月11日(於:奈良教育大学) イ「図から図形をくみ尽くす力」第53回近畿数学教育学会,2013年2月23日(於:神戸女子大学) アに至るには,先行研究,調査問題の作成,調査依頼,調査実施,学生の回答分析,意図した調査に沿った分析集計,集計結果の考察と量的にも質的にも幅の広く深い内容であった。図形指導に悩む中学校教師,学会の研究者らが参加した発表会の参加者から,「図の変数性」という新しい視点で図形指導を考察する斬新さと図形指導の切り口に対し,多くの反応があり,図形指導の一助となる論文として認められた。 イも発表に至るまでアと同様な作業が伴った。中学生から,大学生へと調査対象が広がり,量的にアより多い調査分析なった。調査結果から大学生の図形にの証明の力は,中学生と変わらないこと,質的には劣るものもあることが判明した。言語活動の重視が叫ばれている中,その基礎となる論理力が大学生は中学生と変わらないこと,または劣っていることは,数学教育のカリキュラム上でも意図した図形教育の必要性を語っている。この研究成果によって,目指すべき図の役割を意識した図形の証明活動の必要性が示されるという,高い達成度をもった研究となった。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の成果を受けて,今後の研究課題は次のことである。 『「図の定数性」,「図の変数性」の概念を文字式と対比させ明確に図形指導に位置づける。その際,授業において証明活動の内容を明らかにし,教師が目標とする授業活動項目を分析し定め,その目標にそった授業研究を行う。また,そのための教材研究および教材開発を図る。』 (平成25年度の計画)平成25年度は「9.研究実績の概要」の研究計画②,③,④が中心となる。〔「図の変数性」,「図の定数性」に関する実態調査問題の実施・分析〕については,平成24年度中心となる調査結果が出せたことから, ・公立中学校で平成24年度調査以外の内容で,特に「図の変数性」,「図の定数性」に焦点をあて,小規模な実態調査を行う。 ・生徒の反応によっては,さらなる分析のために,面接を行い,その回答の内容を確認する。〔教材開発〕については, ・調査結果も活かし,図を意識した証明活動の分析と教材開発を行う。 ・証明に使う言葉の精選化の過程の指導,効果的な言語活動について検討する。〔指導実践〕については, ・現場の先生方との意見交換をしながら,授業の実際を想定し,指導計画を立案し,指導案を作成する。 ・香川大学附属中学校,香川の公立中学校の両校で,指導実践を試みる。また,その評価について検討する。 (平成26年度の計画)平成26年度は【研究実績の概要】の研究計画④,⑤が中心となる。これまで,教材開発,授業実践の往復を繰り返しながら教材開発の質的向上に努めてきたが,授業実践とその評価が中心となる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の直接経費は700,000円である。この予算に対し,研究計画の意図に沿い,次のように使用計画を立てた。 1)物品費 80,000円 2)旅費 400,000円 3)人件費・謝金 192,000円 4)その他 28,000円 1)については,実験授業記録等用のデジタルカメラ・ICレコーダー等,資料まとめ集計結果まとめ等用のプリンター等に充てる。 2)については, ・研究分担者との打ち合わせ ・学会等に参加し,発表及び資料収集 ・実験授業実施者との打ち合わせ及び調査 に充てる。 3)については,専門的知識のある方からの本研究に対する考察の視点等のための示唆をいただくための謝金,データ整理等のアルバイト代の謝金に充てる。 4)については,研究分担者や実験授業実施者等への資料交換,資料送付用の通信運搬費,資料印刷・コピー費に充てる。
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