研究課題/領域番号 |
24653282
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
朝倉 史明 神奈川大学, 工学部, 准教授 (80301589)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 生物多様性 / 植物 / 粗抽出物 / ポリメラーゼ連鎖反応法 / 電気泳動 |
研究概要 |
植物を例として生物多様性・進化をDNAレベルで実感できる教育プログラムの開発を目指し、2012年度、研究を遂行してきた。以下に実績を項目ごとに明示する。(1) 食材として入手することが容易な、広範な植物種(19科39種)において、抽出バッファー中ですりつぶし、遠心により調整した粗抽出物がポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法用の実験試料として問題なく使用できることを確認した。同時に、粗抽出物を鋳型DNAとして用いる際、二社(TOYOBO、TAKARA)の粗抽出物用のDNAポリメラーゼが特に増幅効率のよいことを見いだした。(2)前の(1)の広範な植物種においてPCR法により安定して増幅できる標的部位一箇所(葉緑体DNAのpsbA、trnH間領域)を確認した。エチジウムブロマイドよりも安全性が高いが検出感度の低いFast Blast DNA Stain(バイオラッド)でも問題なく検出できた。同時にその標的部位を増幅する際のPCRプログラムを確立した。(3) 前の(1)の広範な植物種において増幅DNA断片長に明瞭な多様性が存在することを確認した。 以上のことから、受ける校生や一般の方が試してみたいと思われであろう身近な植物が実験試料としてほぼ利用可能であり、psbA、trnH間領域のDNA断片長の多様性を実感していただけるような教育プログラムの実験系が、一つではあるが、できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在のところ、葉緑体DNAのpsbA、trnH間領域のDNA断片長の多様性のみの実験系しかできていないが、食材として身近な植物のほとんどの粗抽出物が分析可能であることが判明した。限られた内容ではあるが実験系が完成した。一方で、次の今後の推進方策で述べるような課題が残っている。以上のことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)食材ではない身近な植物、観賞用植物、野生植物、雑草については、それらの粗抽出物がまだDNA分析の実験材料として利用可能か否か調査し、実験材料として適した植物種と粗抽出を行う部位(葉や種子など)のリストを作成する。(2)確認がとれた多様性が検出できるDNA領域も、現在のところ、葉緑体DNAのpsbA、trnH間領域の一箇所である。他の可能性を模索する。(3)葉緑体DNAのpsbA、trnH間領域において近縁植物間ではDNA断片長の差異が見いだせない場合がある。制限酵素解析を併用し、近縁種間の多様性も検出できるようにしたい。DNA断片の挿入/欠失以外のDNAレベルの差異として塩基配列の差異があるが、塩基配列レベルの多様性を示す上で適した例が見いださせると考えられる。(4) 主な植物種においてPCR法によって増幅したDNA断片の塩基配列を解読し、教育者が参考にできるデータを収集する。
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次年度の研究費の使用計画 |
DNAポリメラーゼ、制限酵素などの試薬類、ならびに試料の調整や酵素反応を行うためのマイクロチューブ類などの消耗品に25万円、塩基配列の解読は外注するが、40万円を考えている。残る5万円は論文別刷りに使う予定である。
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