研究課題/領域番号 |
24653296
|
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
郡 由紀子 徳島大学, 大学病院, 講師 (70243722)
|
研究分担者 |
上田 公子 (山口 公子) 徳島大学, 大学病院, 助教 (40335807)
尼寺 理恵 徳島大学, 大学病院, 助教 (50274246)
中川 弘 徳島大学, 大学病院, 助教 (70192218)
吉岡 昌美 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (90243708)
|
キーワード | 広汎性発達障害 / Developmental Disorders / 歯科受診適応性 / 唾液アミラーゼ |
研究概要 |
本年度は、昨年度作成した「歯科受診適応性評価表」を用いて、広汎性発達障害(PDD)児・者の適応性評価と唾液アミラーゼ値のデータ収集を行った。 本年度データ収集の対象とした被験者は、徳島大学病院小児歯科を受診中のPDD児・者で言葉によるコミュニケーションが可能な知的レベルを有するもののうち、保護者の承諾が得られた16名(男性12名、女性4名、年齢6歳~19歳)である。「歯科受診適応性評価表」は8つの大項目(1年齢、2歯科治療経験の有無、3初めての場面の受け入れに関する項目、4言語能力、認知能力に関する項目、5コミュニケーション能力に関する項目、6感覚過敏性に関する項目、7こだわり、切り替えに関する項目、8衝動性、多動性に関する項目)から構成され、各項目について2から8の小項目があり、合計26項目から成る。歯科受診適法評価表の記入は保護者に依頼した。また同時に被験者の唾液アミラーゼ値を測定した。各被験者の歯科受診への適応状態は担当歯科医師が、良好、やや困難、困難の3段階で評価した。 被験者を歯科受診適応性が良好なグループ(8名)と、適応がやや困難あるいは困難なグループ(8名)に分けて、歯科受診適応性評価表の各項目について比較検討した。 その結果、言語能力、認知能力に関する項目と感覚過敏に関する項目において、なかでも味覚に関する小項目について有意な差(<0.01%)が認められた。また、感覚過敏性に関する項目のうち聴覚に関する項目において有意な差(<0.05%)が認められた。さらに唾液アミラーゼ値に関しても両グループ間に有意な差(<0.05%)が認められた。すなわち歯科治療の適応性が良好な群では、言語能力、認知能力の高い人が有意に多く、歯科治療が困難な群では感覚過敏があり、とくに特定の味覚へのこだわりや大きな音を嫌う傾向があることがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、歯科受診適応性評価表を用いて被験者からのデータ収集を行うことができたが、当初目的としていた、受診して間もない広汎性発達障害(PDD)児・者だけでは被験者数が不足するため、受診歴の長いPDD児・者からもデータを収集することとした。この場合、当初目的の行動調整支援はすでに達成されていると考えられる被験者も含まれるようになるため、行動調整プログラムの適否に関しては明らかにされない可能性がある。 しかし唾液アミラーゼ値によるストレス評価は大変参考になることが示されており、この点では被験者数を多くすることは意義があると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
当初研究計画では、歯科受診経験が少なく、歯科受診に対して不適応を示すPDD児・者に対して効果的な行動調整プログラムを提示することを目的としていたが、条件を限定すると研究機関内に十分な被験者数が得られないことから、受診歴を限定せず、データの収集をすることとした。 被験者数を増やすことで、歯科受診適応性と適応性評価項目の相関性についての統計的分析は信頼性を増すこととなるが、行動調整プログラムの提示に至るまでの症例数としては不足すると考えられる。 そこで研究計画の変更としては、本研究では①歯科受診適応性と適応性評価項目の相関性を明らかにする。②適応性評価項目と唾液アミラーゼ値の相関性を明らかにする。以上より歯科受診適応性の評価項目のうち、適応性把握に最も適切な項目を明らかにする。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究分担者の旅費として計上していた経費について、予定が変更となり当該研究費から支出を行わなかったため、次年度使用額が生じた。 次年度は、研究成果を国際障害者歯科学会(ドイツ・ベルリン)と日本障害者歯科学会(宮城県仙台市)発表予定のため、旅費に使用予定である。また、研究成果の論文発表のための経費として使用予定である。
|