研究概要 |
研究代表者がこれまでの研究で構成していた指数が1/2, ・,・,・,1/2と1, ・,・,・,1の場合の一般超幾何関数を周期積分に持つ射影直線から3点0, 1, ∞を除いた数論的曲線上の数論的カラビ・ヤウ多様体族に対して (i) 2進還元の開モデルの構成 (ii) カラビ・ヤウ多様体族の素体上のコホモロジーの決定 を行った。指数が1/2, ・,・,・,1/2と1, ・,・,・,1の場合は、幾何的には2次被覆で与えられるために対応するガロア表現は、数論的な分岐と幾何的な分岐が混じっていて、2進還元で野生的な分岐が生じる。この表現を2進整数環上の族としての不分岐な表現とみるためには、2を分岐させ、さらに2次被覆をアルティン・シュライアー型の被覆に変形することが必要であり、その開多様体族の具体的な形を与えたのが(i)の結果である。(ii)では、クレメンス・シュミット完全列(p進コホモロジーについては、研究代表者とパドバ大学のキアレロット教授との最近の共同研究であるp進クレメンス・シュミット完全列)を利用して、カラビ・ヤウ多様体族の素体上のコホモロジーがいつ非自明になるかを決定した。このコホモロジーは、アーベル・ヤコビ写像などの高次チャウ群(モチビックコホモロジー)の行き先に当たるコホモロジー群で、数論幾何において重要な役割を果たすものである。また、カラビ・ヤウ多様体族の相対的な豊富因子や射影空間の埋め込みの次数に関して考察をした。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者による指数が1/2, ・,・,・,1/2と1, ・,・,・,1の場合の一般超幾何関数を周期積分に持つ射影直線から3点0, 1, ∞を除いた数論的曲線上の数論的カラビ・ヤウ多様体族の数論幾何的な性質を考察して、数論幾何の未解決予想の例を考察する。また、分母が小さい指数に関する一般超幾何関数を周期積分に持つ数論的多様体族を構成し、ベッチ、ド・ラム、l進エタール、p進リジッドの各相対コホモロジーの決定し、0, 1, ∞の周りでの特異ファイバーの退化の様子を考察する。さらに、数理物理学的な視点から、既に得られている数論的カラビ・ヤウ多様体族を再検討する。 指数が1/2, ・,・,・,1/2と1, ・,・,・,1に対応する数論的カラビ・ヤウ多様体族はブローアップにより具体的に構成されるために、コホモロジーを含めて代数幾何的な不変量が計算可能である。数論幾何においては、代数的サイクルとコホモロジーに関して様々な予想があるが、これらの予想は代数曲線の場合を除くと自明な場合しか解決されていまいものが多い。ここで得られた多様体を通して、レギュレーター写像に関するベイリンソン・テイト予想などの実験を行い、高次元の場合の非自明な例を与えることを一つの目標とする。また、一般超幾何微分方程式の解を通して、p進対数的増大度に関するドウォークの問題を考察し、その幾何学的な性質を利用して、素数pを動かしたときの大域的な性質を具体的な例で考察する。 この研究で取り上げている問題は数学の多方面の分野と密接に関係があり、あらゆる方向からの切り口を用いたアプローチが可能である。そのため、研究代表者は、連携研究者や関連する分野の研究者と密接に連絡を取りながら研究を遂行する。
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