研究課題/領域番号 |
24654005
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
谷口 隆 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (60422391)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 第二主要項 / 密度定理 / 整数論 / 3次体 / 国際情報交換,米国 |
研究概要 |
整数論の密度定理における第二主要項の研究を行った.主要な道具は概均質ベクトル空間のゼータ関数である.本年度の成果は以下の通り.なお,(A), (B) は Manjul Bhargava氏(プリンストン大), Frank Thorne氏(南カロライナ大)との共同研究,また(C)は Gutam Chinta氏(ニューヨーク市立大)との共同研究である. (A) 3次体を数える関数と,2次体のイデアル類群の3等分点を数える関数について,誤差項の改良を得た.具体的には,第二主要項の指数5/6に対し,誤差項の指数がそれぞれ以前に7/9と18/23であったものを2/3と17/22にまで改良できた.「数の幾何」を使う方法では誤差項の指数を3/4より小さくすることはできないため,ゼータ関数を使ってこれより小さな2/3が得られたのは意義深いと考えられる. (B) 一般の代数体K上での相対3次拡大を数える関数について,誤差項の評価を得た.今回得られた誤差項の指数は,Kの拡大次数をdとして,(4d-1)/(4d+1)である.一方,ゼータ関数の極から得られる可能な第二主要項は指数が5/6である.Kが2次体の場合は誤差項の指数は7/9であって5/6より小さいため,実際に第二主要項の存在が証明できた. (C) ある可約な10次元の概均質ベクトル空間に付随する,2変数のゼータ関数について研究した.第二主要項に対応する極の留数を計算した.整数論的にはこのゼータ関数も3次体を何らかの重みで数えており,最終的には3次体の密度定理に結びつくと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」欄に述べた(A),(B)は,いずれも数の幾何を使う方法では困難な成果であり,概均質ベクトル空間のゼータ関数独自の効果的な応用を提示したと考えられるから.
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今後の研究の推進方策 |
(a) 2次体のイデアル類群の3等分点を数える関数について,誤差項の評価を改良する.「Nakagawaの恒等式」によって合同条件を簡易化し,さらに解析数論のテクニックを融合して指数を3/4より小さくすることを目指す.達成された場合には,代数体上の相対2次拡大についても同様の問題に取り組む.Manjul Bhargava氏(プリンストン大), Frank Throne氏(南カロライナ大)と研究連絡を取りながら研究を進める. (b) ゼータ関数の解析的性質の研究に,数の幾何の手法を取り入れることができないか研究する.数の幾何の手法で研究を行っている Manjul Bhargava氏(プリンストン大),Arul Shankar氏(プリンストン高等研究所)と研究連絡を取りながら研究を進める. (c) 可約な概均質ベクトル空間の整数論的応用について研究する.Gutam Chinta氏(ニューヨーク市立大)と研究連絡を取りながら研究を進める.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究代表者を中心として,異なる技法から第二主要項を精力的に研究している若手研究者を海外研究協力者として,連携を密に取りながら研究を進める.また,活発な研究を行っている様々な関連分野の国内若手研究者とも研究討論を行う.このために,研究代表者が国内外の渡航を何度か行う他,ある程度の期間にわたって複数の国内外の研究者を招聘して研究活動を行う. 国内外の出張:成果発表と研究打ち合わせの出張を行う.(約500千円) 研究者招聘:研究打ち合わせのため,国内から2名,海外から1名程度,招聘する.(約500千円) 物品費:情報収集や研究推進のために必要な図書を購入する.(約100千円) 謝金:大学院生を含む若手研究者に,具体的な研究課題に関連して計算機実験による研究補助を依頼する.(約100千円)
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