研究課題/領域番号 |
24654005
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
谷口 隆 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60422391)
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キーワード | 第二主要項 / 密度定理 / 整数論 / 2次体のイデアル類群 / 2元3次形式の空間 / 概均質ベクトル空間のゼータ関数 / 国際情報交換,米国 |
研究概要 |
整数論の密度定理における第二主要項の研究を行った.概均質ベクトル空間のゼータ関数を主要な道具として研究した.本年度の成果は以下の通りである.なお,これは Manjul Bhargava 氏 (プリンストン大)及び Frank Thorne 氏 (サウスカロライナ大)との共同研究である. 2次体のイデアル類群の3等分点を数える関数について,これまでの研究で主要項を二つ決定し,誤差項の指数を17/22としていた.この誤差項の評価を改良した.「Nakagawaの恒等式」によって合同条件を簡易化し,さらに解析数論のテクニックを融合して指数を11/16にまで下げることができ,特に3/4より小さくできた.二つの主要項が実際の数え関数を精密に近似している証拠である. このような密度定理を得る方法にはゼータ関数を使う以外に数の幾何によるアプローチが知られているが,今回のケースでは数の幾何のアプローチでは,指数を3/4より小さくすることは困難なようであり,ゼータ関数を使ってこれより小さな11/16が得られたことは意義深いと考えられる. この成果について,現在論文を執筆中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「研究実績の概要」欄に述べたように,数の幾何を使う方法では困難な成果を得たので,これは概均質ベクトル空間のゼータ関数独自の効果的な応用を提示したと考えられる. 3次体を数える関数については,前年度の研究で誤差項の指数を2/3としていた.本年度の研究とあわせ,2つの密度定理いずれにおいても誤差項の指数を3/4より小さくできたのは,2元3次形式のなす概均質ベクトル空間から得られる密度定理について,当初の計画以上の成果を挙げたと言える.
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今後の研究の推進方策 |
これまでは主に2元3次形式の空間についてゼータ関数を用いて調べてきたが,この研究はかなり満足のいく段階に到達した.今後は,4以上の自然数nについての,2元n次形式の空間について第二主要項を研究する.nが4以上のときは今のところゼータ関数は見出されていないが,数の幾何を使ったアプローチは依然として有効であることが明らかになっている.これまでの知見を踏まえ,特に Arul Shankar 氏(ハーバード大)と緊密に研究連絡を取り,研究を進める.同氏を夏季に招聘する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費を効率的に使用し,残額が発生した. 研究代表者を中心として,さまざまな技法から第二主要項を精力的に研究している若手研究者を海外研究協力者として,連携を密に取りながら研究を進める.また,活発な研究を行っている様々な関連分野の国内若手研究者とも研究討論を行う.このために,研究代表者が国内外の渡航を何度か行う他,ある程度の期間にわたって複数の国内外の研究者を招聘して研究活動を行う. ①国内外の出張:成果発表と研究打ち合わせの出張を行う.(約500千円)②研究者招聘:研究打ち合わせのため,国内から2名,海外から1名程度,招聘する.(約500千円)③物品費:情報収集や研究推進のために必要な図書を購入する.(約100千円)④謝金:大学院生を含む若手研究者に,具体的な研究課題に関連して計算機実験による研究補助を依頼する.(約100千円)
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